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東京地裁 タイ国籍親子の「強制退去」取り消し請求を棄却

2016/07/01

 2016年6月30日、東京地裁は、タイ国籍の母親をもち、日本で生まれ育ったウォン・ウティナンさん(15歳)の退去強制処分撤回を求める訴えを退ける判決を言い渡した。
 ウティナンさんは2000年に山梨県甲府市で生まれた。母親はタイ国籍をもつ超過滞在者だったため、強制送還を恐れてさまざまな場所を転々としながら、1人でウティナンさんを育てていた。このような事情から小学校に通うことのできなかったウティナンさんだが、11歳になる少し前に、甲府市の在日外国人支援団体「山梨外国人人権ネットワーク・オアシス」に出会い、団体の提供する学習支援などを受けるようになった。その後は、友達もでき、社会とのつながりが生まれていった。支援団体を含めた同市教育委員会との交渉により中学校へも通学ができるようになり、学校ではバスケットボールや演劇などの部活にも参加。友達にも囲まれ充実した生活を送っていたという。
 2013年夏、ウティナンさんは母親とともに東京入国管理局に出向き、正式に「在留特別許可」を申請した。しかし翌年、申請は認められず、退去強制処分が言い渡されたのだ。
 ウティナンさんは「入国管理局の人から「君とお母さんはタイに帰りなさい」ときつく言われて頭の中が真っ白になった。日本で生まれ育ち、タイには行ったことがなく、友達もいない。タイ語は話せるけれど読み書きはできない。何も悪いことをしていないのに、なぜ退去させられなければならないのか」と、このときの心情を書き綴っている。ウティナンさんの通う学校の教員や友達は、退去強制処分を聞いて涙したり、署名活動を始めると言ってくれたという。
 このままでは一度も暮らしたことも、訪れたこともないタイに送還されてしまう。2015年1月、ウティナンさんは国を相手取り、処分の取り消しを求めて提訴した。
 しかし今回、東京地裁は処分の取り消しを認めないという判断をした。岩井伸晃裁判長は訴えを退けた理由として、母親について「タイに帰国しても特段の支障はない」とし、ウティナンさんについては「退去させられる母のかわりに養育する人がいない」としている。
 ウティナンさん側は、今回の判決は不当であるとして、控訴する方針だ。

【報道】
●NHK(6/30) 強制退去処分 取り消し求めたタイ人高校生と母が敗訴
●弁護士ドットコムニュース(6/30)「生まれ育った日本にいさせて」タイ人少年「退去処分」取り消し請求認められず

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