ニュース

イベント報告「“自分の身体を大切にする”ってどんなこと? 『性』をみんなで語ってみよう」

2017/12/13

 11月25日の女性に対する暴力撤廃の国際デーから12月10日の国際人権デーをつなぐ16日間には、毎年、世界各地で「ジェンダーに基づく暴力(GBV)と闘う16日間キャンペーン」が取り組まれます。
 2017年12月3日、アジア女性資料センター・ユースグループは、この16日間キャンペーン企画として「“自分の身体を大切にする”ってどんなこと? 『性』をみんなで語ってみよう」を開催しました。
 毎日のように性暴力事件が報道され、日々の生活のなかでは私たち自身も、性や身体に関する悩みは尽きません。でも「性」にまつわることは、もっと楽しかったり、喜びを感じたりしてもいいはずのことです。どうしてこんなにネガティブなイメージをもってしまうのでしょうか……。そんなことを考えたユースグループ・メンバーが、タブーにされがちな「性」について語り合いたいと、このイベントを企画しました。
 第1部では参加者同士のグループディスカッション、第2部ではNPO法人ピルコン代表の染矢明日香さんによるゲストトーク、第3部では3か国のユースたちによるそれぞれが受けた性教育についての発表がありました。盛りだくさんの内容でしたが、約20人の参加者同士、これまでの「性」にまつわる経験や日本の性教育について感じていることなどについて活発に意見交換ができたと思います。
 以下、当日の報告です。

***

【第1部】グループディスカッションgroupdiscussion3
 4~5人のグループに分かれて、参加者がこれまで経験した「性」に関するトラブルについてディスカッションをしました。
 電車のなかで痴漢にあった、知り合いに性的に貶めるようとする言葉をぶつけられた、怖い思いをしても周囲にいる人が何も助けてくれなかったといった経験が共有されました。また、学校ではセックスを生物学的な観点からしか学ばなかったため、セックスの同意など性を取り巻く人間関係がよくわからないとか、セックスや身体についてオープンに話せる場がないといった悩みも語り合いました。

***

【第2部】ゲストトーク
 NPO法人ピルコン代表の染矢明日香さんが「トラブルはなぜ起きた? ”自分の身体を大切にする”ってどんなこと」をテーマに、日本の若い世代を取り巻く性のトラブルとその背景についてお話ししました。ピルコンは、性の健康を学ぶ場づくりに取り組む団体です。中学生から大学生向けに、意図しない妊娠や性感染症、デートDVの予防などをテーマに性の健康教育をしています。また、自分の人生をどのように実現したいかというキャリア教育や、小学生や中学生の保護者やPTAへの講演、恋愛や性の傷つき体験を持つ女性のための自助グループもされています。

guesttalk (染矢さんのお話)

 性に対するイメージは、それぞれの経験によって形作られる。私自身は、性について、ワクワクしたり、おもしろそうだと思っていた。しかし、20歳の時に妊娠をして、中絶を選択したことがある。性の楽しくハッピーな裏側には、そういうリスクもあることを学んだ。いま、1歳の子どもがいるが、子育てを通して、温かくて柔らかい存在と触れ合える幸せという性の一面もあることを感じている。このように自分の経験を通して性の価値観は変わっていくものだ。

 「性」にはポジティブな面、ネガティブな面、どちらもあるが、性行動をしていくうえで、若者のリスクは高いと言われている。例えば、予期しない妊娠がある。予期しない妊娠をして、出産を選択しても、虐待をしてしまうとか、仕事にうまく就けずに貧困になってしまうというリスクなどがある。中絶を選択しても、中絶をしたことが心の傷やトラウマに繋がってしまうこともある。

 また、性暴力のリスクも高い。たった1回の関係だったとしても、そのあと、心に深い傷がついてしまうという人は多くいる。心の健康を崩して日常生活に大きな影響が出てしまうこともあり、性とは、とてもセンシティブなもの。性感染症については、その時に健康を害すだけではなく、気が付かずに保持していると不妊や母子感染につながることもある。こうしたトラブルやリスクを減らすためにはどうしたらいいのかを考えることが性教育の一つの大切な目的だ。

 現在の日本では性の問題は多極化している。中絶件数や性感染症の数は減少傾向にあるが、性の問題が解決しているのかと言えば疑問が残る。

 交際経験のある10代の女性のうち、何らかの形でデートDVを受けたことがある人の割合は44%に上る。男性は27%だが、女性と比べて男性の方が被害に遭ったことを言い出しにくい傾向にあるため、実際の被害はもっと多いだろう。若者にとってデートDVは身近な問題だということがわかる。また、少子化や不妊の問題がニュースなどでよく取り上げられている。背景には、若者の恋愛離れがあるとも言われているが、SNSを通した性被害が増加していたり、夫婦間のセックスレスの問題もまたニュースになっている。

 このように、さまざまな性の問題がある。単に妊娠や病気を防ぐだけではなく、どういう関係性を育んでいくのかという知識を付けるという意味で、性教育は大事だ。産む産まないは個人の選択だが、自分がこうなりたいと思えるところに近づけるような知識を持つことは重要だと思う。

 さまざまな調査で、性について無関心または嫌悪感を持つ若者が増加しているということが明らかになっている。私は性についてポジティブなイメージをもっているから、この調査結果を見たときには衝撃的だった。とくに女性が性について嫌悪感を持つ人が多いという結果が出ている。10歳後半女性の約7割がセックスに(どちらかというとも含め)関心がない、または嫌悪感をもっているという。性についてここまでネガティブなイメージを持たれているのは問題ではないだろうか。

 このようなイメージにつながる情報はどこから入ってくるのかを見てみると、昔から多い「友人や先輩」という回答のほかに「インターネット」という回答が増えている。インターネットで「セックス」というキーワードを入力して調べてみると、とても直接的で暴力的な情報が出てくることが多い。ネガティブなイメージを持ってしまう大きな原因の一つではないかと思う。

 学校の性教育では避妊や性感染症予防については教えることになっているが、実施状況は学校によってかなり差がある。本日のディスカッションでも「学校では性教育がほとんどなかった」という人がいた。学校で教えられなければ、なかなか情報を得る機会がない状況なので問題だ。

 若者の性のトラブルの背景を見ていくと、知識が乏しいとか、リスクの認知が低いなどの理由もあるが、別の要素もあると感じている。例えば、家族や親との関係性が難しいとか、学校がうまくいっていないなどの理由から「将来はどうなってもいい」と考えて、自分自身のことを大切にできないという若者がいる。そういう場合は、知識をもっていたとしても、自分の身体を大切にするための行動に繋がりにくい。性のトラブルだけではなく、そのほかの問題につながっていることもあるので、私たち大人や支援者は、そうした知識や対応方法を身に着けることも重要だ。

 性について知る権利は「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」「セクシュアル・ヘルス/ライツ」として、下記のように人間の基本的な権利として定められている。

① 子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める権利
② 安全で効果的な避妊手段を使用する権利、中絶する権利
③ 女性やカップルが強制によらず、また健康上の脅威にもさらされずに、安全な性交、避妊、出産ができ、適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利
④ 安全な性生活、妊娠・出産、避妊をもって自由に家族計画ができるような環境

guesttalk2 こうした権利が定められているので、もし上記のことができなかった場合、それは当事者の責任ではなく社会の責任であるということだ。どのようにして権利が守られる社会を整えていくかを考える必要がある。

 学校における性教育は生殖や生物学的な性に偏りがちだ。小中学校では受精に至るまでの過程、つまり性交や性行為を扱ってはいけないという決まりがある。しかし、中学校では性感染症を教えている。性行為で感染すると教えずに、性的接触で感染すると教えているが、それで本当に理解できるのか疑問だ。

 性行為には、お互いの意思確認がとても重要。また、性のトラブルで困ったときには、保健所で検査や相談ができること、病院だと女性は産婦人科、男性は泌尿器科で相談ができることを知っておくといい。学校の保健室の先生や信頼できる大人に相談することも大事だが、果たしてどれくらい信頼できる大人がいるだろうか。匿名で相談できる地域の機関もあるが、紹介してもハードルが高いと感じてしまう若者は多い。もっと気軽に相談できる場所があればと感じている。

 「自分の身体を大切にする」とは、自分の身体を守るための知識を持つことであると同時に、自分の身体を自分自身が受け入れることだと思う。それぞれ身体に対するコンプレックスはあるかもしれないが、それも含めて自分自身であることを受け入れることが大切だと思う。知識を持っていることと実践できることには差があることも感じている。知識を持ったうえで、健康で不安のない性行動を選択できるようになることが重要だ。

***

【第3部】ユース世代のディスカッション「私はこんな性教育を受けました」
 3人のユースが、ドイツ、日本、インドの学校で、それぞれが受けた性教育について発表しました。

ニーナ根木(Nina Negi)さん(ドイツ出身、アジア女性資料センター・インターン)nina

 私は今年ドイツの高校を卒業して、現在、大学進学前の1年間、日本で日本語を勉強している。
 私は「性」について、とてもポジティブなイメージがある。ドイツでは小学校から性教育があり、これまでたくさん学んできたと思っている。小学校の頃から性はタブーではなかった。性について友だちとも気楽に話すことができる。これから経験するだろう性に関するさまざまなことも楽しみにしている。
 小学校の授業では、身体やセックスについて、イラストなどを使ってわかりやすく説明された。小学生向けに、セックスについて解説している本や雑誌なども配布された。担任の教員はもちろん、NGOスタッフなど外部からの講師なども招いて授業が行われていた。ドイツでは小学校3、4年生くらいから性教育がはじまる
 ドイツといっても広く、地域によって違いがある。私が住んでいたのは「リベラルでオープン」というイメージがあるベルリンだった。しかし例えば、バイエルン州では違った性教育がされていると思う。
 ドイツには常設文部大臣会議(KMK)があるが、1968 年、この会議が「学校における性教育に対する勧告」を発表し、それまで家庭の責任と考えられてきた性教育を学校教育で行うことを決めた。そこから学校で性教育が行われ、さまざまな教材も作られたのだ。
 しかし、私が受けてきた性教育は、人の気持ちや人間関係というより、生物学的な話がメインになっていたと思う。性感染症や身体に関する用語などは教えてもらえるが、パートナーシップとはどういうものかとか、人間同士の気持ちや関係性について学ぶ機会は現在でも少ない。そこで、人間同士の関係性や相手を大事にすることについても学校の性教育に取り入れていこうという動きがある。
 いま、ドイツではセクシュアル・マイノリティの権利も大きなテーマになっている。当然、学校の性教育にもセクシャル・マイノリティの視点を取り入れていく必要があるが、保守や右派勢力が反対している。反対派は数としては少ないが、「セクシュアル・マイノリティについて教えるのだったら自分の子どもを学校に行かせない」という親までいるという。ドイツの課題のひとつだ。
 ドイツでも、ポルノやマスターベーションについてはタブーのままになっている。ポルノは、インターネットの普及によって小さな子どもたちも目にすることがあるため、どのように、わかりやすく教えるのかは大事な問題だ。マスターベーションも悪いことではないし、どのようにタブーを壊していくかは課題だと思う。
 ドイツにも性にまつわるトラブルはもちろんあるが、日本との違いは、若い人たちにとって性のイメージがもっとポジティブだということだと思う。友人とも「どうだった?」「気持ちよかった?」など聞き合ったりすることもある。それはいいことだと思う。
 学校の教員が教えるだけでは不十分な部分は性教育専門のNGOが担っている。ピルコンのような団体の存在は大事だ。
 どのような性教育がいいのか、親も教員も子どもたちも専門のNGOも、みんな一緒に話し合うべきだと思っている。

akane山本朱音さん(日本出身、上智大学学生)

 私は幼稚園からずっと同じ女子高に通っていて、大学ではじめて共学の教育を受けることになった。去年、アメリカに留学するまでは、自分の受けてきた性教育は十分だと思っていた。
性教育に関して、私は、女子高に通っていてよかったと思っている。共学に通っていた友人から、共学の学校では、男女別々の授業があり、その授業後には、ふざけてセクハラのような発言をする人もいたと聞いた。女子高ではそういうことはなかった。
 日本では、まず保健体育の授業で、生理が始まって身体に変化が現れて妊娠する身体になるという説明をされる。私の場合は、高校1年生で避妊についての授業があった。教員が、コンドーム、リング、ペッサリー、ピルの図を淡々と説明していた。説明された避妊具について、誰が、どのくらいの割合で使っているのかはわからなかった。
その授業より前にコンドームについて学んだことがあった。中学1年生の理科総合の授業だった。このときの印象は私にとってかなり強いものになっている。男性の教員がみんなを前に集めて、コンドームを野菜にかぶせて使用方法を説明した。教員は、コンドームは万能なものではないし、破ろうと思えば破れるものだという解説もしていた。その授業で、自分から「コンドームを使ってほしい」と言ってもいいこと、自分自身がコンドームを買ってもいいことを学んだ。
 私が中学生だった頃、「NANA」という漫画が流行っていた。二人の「なな」が主人公なのだが、一人の「なな」はコンドームを使っていて、もう一人の「ナナ」はピルを飲んでいる。ピルを飲んでいる「ナナ」は、ロックスターで「かっこいい女性」というイメージで描かれており、その頃の私は「ピルって、ナナみたいな、かっこいい女性が飲むんだ」と勝手に思っていた。
中学生や高校生は、漫画やネットで見たものに影響を受けやすいと感じている。学校でしっかりと性教育が行われていれば、そこまで繊細にならないのかもしれない。しかし、性教育が薄いことによって、さらに影響を受けやすくなっているのではないか。
 去年、アメリカに留学したが、性教育について幅広く教えていたことが印象的だった。アメリカでは避妊の授業の前に同意についての授業がある。セックスの同意がなければ、避妊も生まれないため、とても重要だと感じた。大学内では同意に関する冊子が配布されていた。それを目にしたときに「考えたこともなかった」と衝撃を受けたことを覚えている。私の受けてきた性教育はとても表面的なもので、セックスとは人と人との関わりなのに、そのようなことには触れてくれなかったと感じた。

アーロン・サロット(Aaron Salot)さん(インド出身、コスタリカの高校に通う)aron

 2007年、インド政府は、国内すべての学校で性教育が行われるようにする法律を成立させた。しかし、すべての学校で性教育が始まると多くの親たちから反対の声が上がり、反対する親たちが子どもを学校へ行かせなくなってしまった。その結果、28州のうち8州が法律を覆し、逆に学校での性教育を禁止してしまった。
 私自身は、学校とNGOという2つの場所で性教育を受けた。私が9歳ときには、性教育が禁止される前だったため、学校で性教育の授業があった。教員が準備されたスライドを読み上げるというもので、ディスカッションなどはなかったと記憶している。私は性について親と話すことができず、インターネットや映画、友人との会話のなかで学校の授業で聞いたことを更に詳しく知ろうとしていた。
 そのようななか、NGOで性について学ぶ機会を得ることができた。NGOでの性教育は学校で受けたものとはかなり違っていた。プレゼンテーションのあとは、グループ・ディスカッションがあり、安心を感じられる空間で自分たちの経験を話し合った。偏見を持たれる心配がなく、自分自身でいられるディスカッションの時間はとても良かったと思っている。
 インドで保守的な考えを持っている人たちの多くは、セックスやセクシュアリティについて話すことは欧米の文化で自分たちの文化ではないという主張をする。性教育は欧米のものだから私たちには必要ないとして、多くの州で学校の性教育実施を禁止したのだ。
 私は、学生たちや若い人たちがそれぞれの経験を話し合える、安心できる場が必要だと感じている。一方的に何かを教えてもらうより、さまざまな人たちの経験を聞いて学ぶことが重要だと思う。さまざまな年代の人と話し合うことも大事だ。性教育とは、セックスを教えるというより、あなたがあなたの身体とどう付き合うのか、あなたがあなたに近い人たちとどう付き合うのかという問題なのだと強く感じている。

***

 最後にアジア女性資料センター事務局の濱田より「全国どこに暮らしていても、どんな経済状況であっても、平等に知識を得られるという視点から言えば、義務教育の中で、自分の身体や人間同士の関係性、セックスの同意、セクシュアリティなど「性」にまつわる大切なことを学ぶことのできる環境が必要だと考える。日本では、ジェンダーバックラッシュによって後退した性教育だが、性やセックスがタブーのままでは、悲しい思いをする人が増えたり、自分の人生を自分自身で選んでいくことがますます困難になっていくのではないだろうか。今後の性教育のあり方について多くの人と考えていきたい」と挨拶し、イベントを終了しました。

 今後もユースグループは性教育に関する活動を続けていきたいと思っています。関心のある方はぜひアジア女性資料センターのユースグループ担当者までご連絡ください。
 ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

資料館