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アルゼンチン:中絶合法化法案が上院議会で否決

2018/08/16

2018年8月8日、アルゼンチンの上院議会で、妊娠14週までの人工妊娠中絶を合法化する法案が、反対38、賛成31、棄権2で否決された。審議は16時間に及んだという。中絶を合法にし、無料の公立病院での処置を可能にする今回の法案は、6月14日に僅差で下院議会を通過していた。上院での審議に向け、アルゼンチン各地で大規模な運動が展開されており、否決という結果への落胆の声は大きい。

中絶合法化に向けた機運の高まりの背景には、南米・南欧で広がる「Ni Una Menos」運動がある。2015年以降、ジェンダーに基づく暴力に抗する、このフェミニズム運動は今回の法案をめぐる議論にも大きな影響を与えた。「Ni Una Menos」運動の中心メンバーは、2018年3月8日の国際女性デーに「中絶の合法化」を第一目標に掲げたマーチを組織し、6月には議会に対し法案可決の要求行動を行った。この要求行動には約2万人が集まっている。

そして運動は、長年タブー視されてきた中絶合法化について、下院議会での法案可決を勝ち取った。今回、上院では否決されたものの、投票直後、行政当局は、今後、予定されている刑法改正では違法中絶に対する刑罰を緩和すると発表している。現行の法律下では、実際の例は少ないが、違法な中絶を行った女性は犯罪者として起訴され禁固刑が科せられる可能性があるのだ。

アルゼンチンは中絶合法化に反対するローマ・カトリック教会のフランシスコ法王の出身国で、今回の結果にもカトリック教会が影響力を持ったと言われている。しかし、「Ni Una Menos」のメンバーであり、ジャーナリストのソレダド・ヴァジェホス(Soledad Vallejos)さんは「状況は以前とは異なっている。なぜならこの5か月間の法律に関する議論によって、すでに社会は変化しているからだ」と語った。また、中絶合法化をめざす人権団体のメンバーは「得たものと失ったもののリストを作るならば、得たものの方がずっと大きい。遅かれ早かれ、この法案は実現することになるだろう」と述べ、今後の動きを期待させる。実際に今回の中絶合法化に関する議論をめぐって、アルゼンチンの多くの市民は法案を支持していることを示した。

しかし、今回の法案否決の影響は深刻だ。8月15日付の報道によれば、上院での否決から4日後の8月12日、自宅での中絶を試みた女性が死亡した。すでに抗議の声が上がっており、アルゼンチンにおける中絶合法化を求める運動はさらに拡大していくだろう。

●2018/07/06 アルゼンチン:中絶合法化を求める大規模デモ

【報道】
●The Guardian(8/9) Argentina abortion vote won’t end legalisation fight, activists say: ‘It’s going to happen’
●The New York Times(8/9) They Lost Argentina’s Abortion Vote, but Advocates Started a Movement
●Newsweek(8/15)Woman Dies After Using Parsley to Induce Miscarriage, First Death Since Argentina Senate Rejected Abortion Bill

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