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特別公開「女たちの21世紀」No.95 「特集にあたって」

2018/09/20

「女たちの21世紀」No.95【特集】「夫婦別姓」はなぜ阻まれ続けるのかに掲載した「特集にあたって」(本山央子)をウェブ公開します。

 

 特集にあたって95号表紙

 「選択的夫婦別姓」は、夫婦がそれぞれ元の姓を保持することを選択肢として認める「だけ」の提案である。改姓によって主に不利益を被ってきた女性たちを救済しうる一方、同姓を望む夫婦にとっては現状と変わりない。
 このささやかな、フェミニズム運動の本丸でさえない要求は、数十年にわたる運動にもかかわらず、分厚い壁に阻まれ続けてきた。その強固さをあらためて見せつけたのが、2015年12月の第一次夫婦別姓訴訟における最高裁の合憲判断である。非自民連立政権下でも国会は差別是正に動かず、裁判所も同氏強制を「合理的」と正当化したことは、多くの人々に深い失望をもたらした。
 それでも、変化を求める人々の動きがやんだわけではない。昨年から今年にかけて、夫婦同氏制度を問う新しい訴訟が次々と提起されており、特にサイボウズ社長の青野慶久氏らによる提訴や、映画監督の想田和弘氏らによる提訴は、男性からの異議申し立てとして注目を集めている。夫婦別姓へのアプローチが「女性に対する差別」から多様化することによって、壁を突破する道は、今度こそ開かれるのだろうか。しかし、わたしたちの前に立ちふさがる「壁」の正体は、そもそも何なのだろう。
 この特集では、これまでの運動をふまえながら、夫婦別姓をめぐる新たな状況が提起している問題を検討し、根幹的に問われているのは何かをあらためて考えてみたい。とりわけ注目に値するのは、青野氏らによる「ニュー夫婦別姓訴訟」や通称登録の拡大案と、「家族」を重視する日本会議との親和性に関する井戸まさえさんの指摘であろう。あたかも個人にとっての利便性・選択の幅が拡大するように見えるときに、個人を差別しながら国家管理に組み込む制度と構造が維持強化されていくという状況は、夫婦別姓の問題にとどまらず、今日女性をとりまく状況そのものを反映しているといえる。その他の論考からも、夫婦別姓を阻む壁とそれぞれ対峙する中でつかみとられた戸籍・婚姻・国民管理や新自由主義的「家族」の再構築といった課題が、他の領域の問題と響きあっていることが見えてくる。
 今日起きている変化を分析し、差別と支配の構造そのものに取り組んでいくために、この特集が活発な議論に役立つことを期待したい。

本山央子(責任編集)

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「女たちの21世紀」No.95【特集】「夫婦別姓」はなぜ阻まれ続けるのか
・特集にあたって 本山央子
・選択的夫婦別姓の実現を阻むものとは何か  坂本洋子
・【インタビュー】 井戸まさえさん 差別撤廃の視点から取り組む重要性――「ニュー夫婦別姓訴訟」の問題とは何か
・夫婦別姓訴訟の原告になる  想田和弘
・【インタビュー】 小国香織さん 第一次夫婦別姓訴訟を闘って
・旧姓併記は「例外的措置」? パスポートから夫婦別姓を考える  大野聖良
・【インタビュー】 福島みずほさん 政界から見る夫婦別姓を阻む壁
・いまこそ〈反婚〉を! ― 婚姻・戸籍・家族  堀江有里

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