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特別公開「女たちの21世紀」No.96「特集にあたって」

2019/01/30

「女たちの21世紀」No.96【特集】「『女性活躍』政策の5年――利用されるフェミニズム」の「特集にあたって」(本山央子)をウェブ公開します。

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 2012年末に成立した第2次安倍政権が「女性が輝く社会」を打ち出したことは、2000年代初期からの「ジェンダー・バックラッシュ」を鮮明に記憶しているフェミニストたちにとって、大きな驚きであった。なにしろ安倍晋三といえば、2000年女性国際戦犯法廷を取材したNHK番組を改変させ、「過激なジェンダーフリー教育」への攻撃を煽ってきた中心人物である。その同じ人物が、あたかもフェミニストに宗旨替えしたかのように「女性の活躍」を語る姿は、質の悪い冗談のようでもある。
 だが、「女性が輝く社会」というスローガンが掲げられて5年。この間、日本のジェンダー格差や女性に対する暴力は明らかに改善されていないにもかかわらず、「女性活躍推進法」をはじめとする一連の施策は、すでにさまざまなかたちで社会にインパクトを与えている。これらの施策がジェンダー格差の是正をもたらすものでないとすれば、それは何をもたらしているのか。そして、ジェンダー関係や女性の権利にどのようなインパクトを与えているのだろうか。
 本特集では、政治代表、労働、外交、防災などそれぞれの領域における施策とそのインパクトをフェミニスト視点から検証し、安倍第1次政権から第2次政権の間の、ジェンダー政策のラディカルな方向転換とみえるものの意味をあらためて考えてみたい。
 さらに、この特集を通して考えたいもうひとつの問いとは、副題にある通り、「利用されるフェミニズム」という問題である。「女性の活躍」という一見フェミニズムに親和的なスローガンを掲げながらも、安倍政権の保守的イデオロギーが本質的に変化してはいないこと、このスローガンが、実際には女性差別の撤廃という国家の義務をむしろ曖昧にするものであることに多くのフェミニストが気づいていながらも、「女性の活躍」施策を正面から批判する声は、高く上がってこなかった。そこには、安倍政権が長期安定化するなかで、正面から批判しても得るものは少ない以上、むしろ交渉によってより良いものを勝ち取るべきという戦略的判断もあっただろう。だが、批判的フェミニズムの声がしだいに小さくなる一方、「女性活躍」という国策は、大資本やナショナリストの利害とよく適合するような種類のフェミニズムを生み出し、促進しつつあるのではないだろうか。
 フェミニズム運動は国家とどのような関係を取り結ぶのか。誰を代表するのか。その自律性を保つために何が必要なのか。かつて日本のフェミニズム運動が国策に動員され、加害の一端を担った過去を想起するとき、これらの問いはいっそう切迫感をもってくる。右派政権によるフェミニズム利用を見つめ分析することを通して、フェミニズムのありかたそのものを議論する場を開いていきたい。

本山央子(責任編集)

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「女たちの21世紀」No.96【特集】「『女性活躍』政策の5年――利用されるフェミニズム」
・特集にあたって 本山央子
・「女性の活躍」と右派の本音  山口智美
・目的か手段か?―― ジェンダー政策課題は、いかに設定されてきたのか  内藤和美
・安倍政権期における軍事強硬主義的女性閣僚増加の構造  海妻径子
・労働分野のジェンダー・ギャップは是正されるのか? 固定化されるのか?  金井郁
・今こそ声を上げて、連帯しよう   吉永磨美
・外交分野における「女性」の活用  本山央子
・災害多発の日本で、女性はどのように考え、活動していくのか  堀久美

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シンポジウム「女性活躍」の5年――ジェンダー平等は近づいているのか?

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