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WAW!/W20開催に寄せる声明:成長のための「女性活躍」ではなく、すべての女性の包括的権利が保障される公正な経済システムへの転換を

2019/03/22

WAW!/W20開催に寄せる声明

成長のための「女性活躍」ではなく、
すべての女性の包括的権利が保障される公正な経済システムへの転換を

 日本がG20の議長国となる今年3月23-24日、女性の経済的活躍を目的として、日本政府主催の第5回国際女性会議WAW!、およびG20に女性に関する政策提言を行う民間のエンゲージメント・グループ「W 20(Women 20)」の会合が同時開催されます。
 会議のスローガン「ジェンダーギャップの解消を通じた新しい成長のカタチ」が示すように、WAW!/W20が焦点を当てるのは、経済成長という目標とジェンダー平等という目標の幸福な結婚です。すなわち、女性の労働市場参入の促進、企業経営における女性の積極的登用、起業や技術革新における女性活用が、成長を追求する国家や企業にとっても利益となることが強調され、こうしたWin-Winの関係を作り出すことを通じて、「誰も取り残されない」グローバル資本主義が実現されるというわけです。
 実際には、グローバル資本主義のリーダーたちは、成長がすべての人に利益をもたらすWin-Winの関係を作り出すどころか、1%の裕福層が99%の人々より多くを得る極端な格差を産み出し、拡大してきました。一方で著しい貧困は、成長のない地域だけでなく、最も成長著しい地域や豊かなG20諸国の内部においても生み出されています。つまり、平等なグローバル経済を真に実現しようとするならば、成長をいかに生み出すか、そのために女性の力をいかに「活用」するのかではなく、これほど極端な不公正が、いかなるイデオロギーやバイアスによって正当化されているのかを問うべきなのです。
 日本はG20の中で、近年最も格差が拡大している国のひとつです。なかでもシングルマザーや単身女性は経済的に脆弱で貧困に陥りやすいことが知られています。その背景には、男性片働き世帯を規範とし、労働力再生産コストを世帯内の女性無償労働に転嫁してきた労働政策や税・社会保障制度があります。さらに近年の労働規制緩和や社会保障の弱体化、「自己責任」イデオロギーは、生活保障の責任を個人に転嫁し、生存そのものへの圧力をいっそう強めています。
 こうしたジェンダー化された経済システムの問題、とりわけ働きかたの問題について、WAW!/W20がまったく取り上げていないわけではありません。しかしその視点はあまりに狭く、またあまりに成長に偏っています。このような成長重視の「ジェンダー平等」論は、著しい格差と不安定性を生み出す現在のグローバル資本主義の根幹に埋め込まれたジェンダーバイアスを是正しないばかりでなく、支配的な労働・家族のモデルに適合しない人々に対する権利侵害を正当化し、成長に寄与しうる女性たちとそうでない女性たちを分断することになるのではないでしょうか。
 とりわけ懸念されるのは、グローバル経済の最下層に位置付けられ、また国民経済の枠組みで不可視化されがちな移住女性の権利について、ほとんど議論されていないということです。日本が直面している深刻な少子化と労働力不足は、人の生存にかかわるケアや再生産労働を「女の仕事」として軽視してきた従来の経済システムの帰結にほかなりません。しかし、日本政府や企業はその根本的矛盾から目を背けたまま、外国人労働者を、労働力再生産費用を負担しなくて済む安価な労働力とみなし、ますます依存を強めようとしています。
 移住女性は、このような日本の経済システムに埋め込まれた外国人差別と女性差別を二重に受けてきました。彼女たちは、介護や家事、不安定な単純労働など日本人女性が担ってきた安い「女の仕事」を引き受けるよう期待されながら、公的支援も十分に受けられないまま自らの家族を支えています。とくに身分が不安定な女性たちは、人種差別と性差別ゆえに深刻な性暴力やDV被害の犠牲となることも少なくありません。なかでも技能実習生は、妊娠・出産・育児に関わるリプロダクティブ・ヘルス/ライツを含む労働者としての基本的権利を著しく制限されており、妊娠した技能実習生の女性たちが、帰国か中絶を迫られたり、出産した子どもを遺棄したとして逮捕されるという深刻な人権侵害さえ発生しています。
 日本政府や企業、グローバル経済のリーダーたちが、真にあらゆる女性の経済的エンパワーメントを達成しようというのならば、成長のみを重視し、人の生存に関わる再生産の問題を軽視する経済システムがいかに深刻な社会的影響をもたらしてきたか、そのしわ寄せが、性差別・外国人差別にさらされる移住女性など最も脆弱な人々の上に転嫁されてきた現実をまず直視すべきです。
 今回のWAW!/W20では「多様性」がテーマに掲げられていますが、「多様性」の名の下に、女性たちの間にある格差や、性差別だけでなく国籍・階級・民族等に基づく差別にさらされている女性たちの困難が正当化されることがあってはなりません。わたしたちは、「持てる」女性が「持たざる」女性を踏み台にすることで成り立つような、成長のための「女性活躍」を拒否し、あらゆる女性、あらゆる人々の包括的な権利が保障されるような公正な経済システムへの根本的転換を求めます。

2019年3月22日

東京都渋谷区桜丘町14-10 渋谷コープ211
特定非営利活動法人アジア女性資料センター

東京都台東区上野1-12-6 3F
特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク

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