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特別公開「女たちの21世紀」No.99「特集にあたって」

2019/09/30

「女たちの21世紀」No.99【特集】ジェンダー視点はどこいった?――破綻に向かう日本経済に掲載した「特集にあたって」をウェブ公開します。

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 景気がよくならない、賃金が上がらない、公共事業が必要、でも財政難だから難しい、それなら社会保障を削ろう、いや、「反緊縮」で財政を膨らませるべきだ―。
 日本の経済が一向に振るわない中で、そんなフレーズが繰り返されては消えていく。その傍らで、しらけ顔で眺めている人口の半分がいる。女性だ。
 賃金が上がらない、というが、被雇用者の4割を超える女性の6割近くが最低賃金レベルの非正社員であることは、さして問題にされない。正社員になれば解決、とも言えない。25歳から29歳の女性の半数以上が年収250万円未満で、うち4割は正社員(2017年就業構造基本調査)だからだ。
 「女は結婚すればいいんだから安くてもいいよね」と値切られ、「働き方改革」の「同一労働同一賃金」でも、「転勤ができなければ安くてもしかたないよね」と引導が渡される。家族への責任で簡単に転勤できない女性が圧倒的に多いのに、これで女性の賃金は上がるわけがない。人口の半分の低賃金が「あたりまえ」とされる社会で、賃上げ政策も何もない。
 労働力不足が顕在化して「女性も活躍しろ」と言われ始めた。同時にだれの希望かわからない「希望出生率」をもとに「1・8人は子どもを産め」と生産目標が掲げられた。子どもを産んで働くなら保育園しかない、と出向いてみると、そこは待機児童の山だ。「これでは活躍できない」と苦情を言うと、子どもを詰め込めば済む、と規制緩和が進められる。
 女性が働いて経済を支えるには、安心して頼れる保育や介護を公的に保障することが不可欠だ。だが、そんな「基本のき」がいまだに意思決定層には希薄だ。
 財政削減だろうが、「反緊縮」だろうが、経済を担う重要な要素である女性の人権のために資金が使われない限り、人口の半分は低賃金のままだ。だから消費は活性化しない。その低賃金は年金にまで響き、高齢女性の貧困が将来の貧困率全体を押し上げる。こうしたジェンダーを忘れた経済政策・財政政策が、いま日本の経済を破綻の淵へ追いやろうとしている。
 ただ、問題は政策決定層だけにあるのではない。多くの女性が、経済・財政と聞くと身を引く。それが、ジェンダー平等の実現から、私たちを遠ざけてはいないか。私たちは、女性が生きやすいインフラ整備にどんな財政が必要なのか、そうした財政のためにどんな経済が必要なのかについて、もっと学び、発言すべきではないのか。
 この特集は、そうした疑問から出発した。この企画が、ジェンダー平等の基盤である経済を、身近なものにするための一歩となることを願っている。

竹信三恵子(アジア女性資料センター理事)

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「女たちの21世紀」No.99【特集】ジェンダー視点はどこいった?――破綻に向かう日本経済

・特集にあたって  竹信三恵子  
・[対談]浜矩子 × 竹信三恵子 ジェンダー視点で見直すと、経済政策の美しい用語の不毛が見えてくる
・女性の生活を左右する自治体財政――「住民ニーズ」の目くらましに騙されるな  奈須りえ
・「老後2000万円不足問題」から再考する女性の年金制度  船橋邦子

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