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CEDAWが日本政府審査の総括所見を公表

2009/08/18

女性差別撤廃委員会(CEDAW)が、第6回日本審査の総括所見を発表しました。前回2003年の審査でも勧告された問題を6年間放置し続け、あたかも条約など実行する必要のない口約束に過ぎないような態度をとってきた日本政府の姿勢そのものを、厳しく問い質す内容となっています。次回こそは、もう少し建設的な審査にしたいものです。以下、主なポイントの要約です。全文はこちらからダウンロードできます。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/cedaw/docs/co/CEDAW.C.JPN.CO.6.pdf

●主要な懸念
条約のすべての条項を系統だてて実行するという政府の義務を果たすよう、あらためて求める。

●前回の勧告
2003年の審査で勧告された事項が、十分に取り組まれていないことを遺憾とし、前回の勧告実行を求める。

●差別的法規
男女で異なる最低婚姻年齢、女性のみに課せられる再婚禁止期間、選択的夫婦別姓、民法その他法規における婚外子差別などの差別的規定が、前回勧告を受けたにもかかわらず、いまだに改正されていない。世論を言い訳にせず、条約上の義務に従って即座に行動すべき。

●条約の法制化
女性差別撤廃条約が、法的拘束力をもつ重要な国際人権法であることを、日本政府は認識すべき。条約のすべての条項を国内法制に迅速に取り入れること、法律家や公務員が条約への理解を深め実践するよう啓発を行うことを求める。また選択議定書の批准を検討するよう勧告。

●差別の定義
国内法に女性差別の定義が欠けていることを改めて懸念、条約1条に基づく差別定義を迅速に取り入れるべき。

●人権擁護機関
男女平等も視野に入れた独立人権擁護機関を迅速に設置すべき。

●国内推進機関
ジェンダー平等を推進する男女共同参画局などの機関を機能強化するため、責任と権限の明確化、調整機能の強化を行うべき。第三次男女共同基本計画の法的枠組みとして女性差別撤廃条約を活用し、モニタリングメカニズムを設けること。

●暫定的特別措置
女性の雇用、公的領域への参加、意思決定への参加を促進するため、委員会一般勧告25号に沿って、暫定的的特別措置を設けるよう勧告。

●ステレオタイプ
女性の人権に対する政府内の「バックラッシュ」に懸念を表明。メディアや教育における男女の役割に対するステレオタイプを取り除くため、教科書の見直し等の取り組みを行うこと、また、公人による女性差別発言の頻発や、女性を性的対象とするポルノグラフィー、メディアにおける女性差別表現に対する政府の取り組みを求める。

●女性に対する暴力
女性に対する暴力に関する意識啓発、データの収集と調査にもとづく介入を行うよう勧告、法執行官や医療関係者等が十分な知識にもとづく支援を行うよう求める。DV法があらゆる形態の親密な関係の暴力を対象としていないことを指摘、保護命令の発行を急ぐこと、暴力被害者のための24時間ホットラインや質の高い支援を提供するよう勧告した。特に、移住女性やマイノリティ女性、弱い立場にある女性の状況に懸念を表明し、弱い立場の女性たちに対し、被害の届け出等について支援を行うほか、暴力防止の意識啓発を行うよう求める。性暴力の親告罪規定の撤廃、強姦罪の法定刑引き上げ、近親かんを性暴力犯罪として規定することを勧告。

●性暴力ポルノ
ゲームや漫画が児童ポルノ禁止法の対象外となっていることに懸念を表明、性暴力を当たり前かのように扱うビデオゲームや漫画の販売を禁止するよう、日本政府に強く求めるとともに、児童ポルノ法の改正を求める。

●日本軍「慰安婦」
被害者への補償、加害者の処罰、公衆教育など、問題の持続的解決措置を求める。

●人身売買、売買春
人身売買や売春搾取の被害者に対する保護やリハビリ、社会統合支援を強化するとともに、女性の経済状況の改善など、人身売買の根本的解決の努力を求める。
買春需要の抑制、売春女性の社会統合、リハビリ、経済的エンパワーメントなどの支援を勧告。研修生・技能実習生が人身売買の温床となっていることを指摘、モニタリングの継続を求める。また、人身取引防止議定書の批准を勧告。

●政治・公的活動への参加
政府や議会、法曹や学術領域の上位に就く女性が少なく、マイノリティ女性の公的活動参加に関する統計の欠如について懸念、事実上の男女平等な参加を確保するため、さまざまな手段による取り組みをもとめる。

●教育
教育基本法が改正され旧5条が削除されたことに懸念を表明、教育における男女平等実現のため、ジェンダー平等の条項を再度取り入れることを真剣に検討するよう日本政府に求める。非伝統的領域における女性の教育・キャリア機会を拡大すること、第三次男女共同基本計画において、大学教職における女性割合を現行の20%から引きあげ平等を達成するよう勧告。

●雇用
労働市場における女性差別と賃金格差、出産・育児を理由とする違法な解雇、セクシュアルハラスメントの横行に懸念を表明。また、「雇用管理区分」が女性差別の抜け穴となっていること、ILO100号条約にもとづく同一価値労働同一賃金の原則が国内法規に欠けていること、セクハラ防止義務違反に対する制裁措置の欠如、差別是正のための法的プロセスに時間がかかりすぎることなどを批判した。
事実上の男女平等の達成を優先課題とし、女性の雇用・昇進機会を拡大すること、賃金格差の是正、違反企業への制裁強化、および救済手段の整備を勧告。

●ワークライフバランス
男女間の平等な家族責任と雇用の分担を促進し、女性がパートタイムに集中する状態を改善すること、保育施設の改善、男性の保育を促すことを勧告。

●健康
女性の性感染症の増加、若年の中絶の増加を懸念。特に若い世代に対し、セクシュアルヘルスに関する教育・情報・サービスを提供すること、中絶を非犯罪化することを勧告。

●マイノリティ女性
アイヌ、部落、在日コリアン、沖縄など、マイノリティ女性の教育、雇用、健康、福祉、暴力などに関する情報の欠如に遺憾の意を表明。マイノリティ女性への差別を撤廃するため、意思決定機関にマイノリティ女性の代表を加えることを勧告。

●弱い立場の女性
農村女性、シングルマザー、障害女性、難民女性、移住女性など、複合差別に遭いやすい弱い立場の女性について情報統計を提供し、特別なニーズに応じた政策をとるよう勧告。

●その他国際文書
北京行動綱領、ミレニアム開発目標、その他の国連人権条約を活用すること、移住者の権利条約を批准することを勧告。

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