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「女性センター」のあり方について 内閣府へ意見書提出しました

2010/03/26

 アジア女性資料センターは、2月11日に共催したシンポジウム+ワークショップ「女性センターはどこへいく?」での議論を踏まえ、同シンポジウムを共催した2団体とともに、第3次男女共同参画基本計画の策定に向けて、女性センターのあり方や職員待遇について以下の意見書を内閣府に共同提出しました。
 
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内閣府男女共同参画特命担当大臣
福島みずほ様

2010年3月26日

アジア女性資料センター
働く女性の全国センター
リソースエンパワーメントネットワークREN

第三次男女共同参画基本計画への意見書
男女共同参画センター等の機能、運営、および職員の待遇について
 公設の男女共同参画センター/女性センター(男女共同参画センター等)は、この30年間に全国約350施設にまで増えましたが、世界57位というジェンダー不平等の是正に、十分役割を果たしてきたとはいえません。むしろ男女平等という基本理念からはほど遠い事業の形骸化や、職員の雇用条件の劣悪化、市民との「協働」の形骸化といった問題も指摘されています。私たちは2010年2月11日、利用者および職員の立場から、こうした女性センターの抱える問題についてシンポジウム・ワークショップを開催しました(「女性センターはどこへいく?」於文京区男女平等センター。参照:アジア女性資料センター発行『女たちの21世紀』No.60)。ここで明らかになった現状や課題を踏まえ、女性センターが真に男女平等と女性のエンパワーメントを推進する拠点として役割を果たすことができるよう、第三次男女共同参画基本計画において、その機能および運営方法、また職員の待遇について明確に位置づけがなされるよう、意見書を提出いたします。

1.男女共同参画センター等の機能
◆ジェンダー平等・女性のエンパワーメント推進という設置目的の再確認

男女共同参画センター等は、2000年代初頭からジェンダー平等に反対する勢力の激しい攻撃にさらされ、また、行政合理化の中で効率性向上を要求されてきた結果、男女平等の推進という設置理念がともすると見失なわれ、集客効果が高く批判を受けにくい無難な事業に流れる傾向が強くなっています。「男女共同参画」の意味が、単に「男性も対象にすること」と誤って受け止められている例も多く見られます。こうした反省を踏まえ、第三次基本計画においては、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進拠点という男女共同参画センター等の位置づけを再確認する必要があると考えます。
男女共同参画会議基本問題専門調査会の「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」(第31回男女共同参画会議資料)では「性別にかかわらず、幅広い年齢の多様な人々に参加してもらう」ことや、「地域や地域に住む人々の課題の的確な把握及び情報提供」が掲げられていますが、男女共同参画センター等は、地域センターや生涯学習センターと異なり、あくまでジェンダー平等を推進する拠点として、焦点をしぼった地域課題の発見や対象の選定を行う必要があると考えます。そのうえでは特に、あらゆるレベルの意思決定における女性の参加、女性の経済的社会的エンパワーメント、女性(とりわけマイノリティー女性)の人権保障といった、主要な課題に重点が置かれるべきです。

◆調査・研究機能、相談機能の強化

行政施設である男女共同参画センター等が、男女平等の推進により大きな役割を果たすためには、男女共同参画政策・計画をトップダウンで実施するだけでなく、地域の女性たちの意見やニーズを吸い上げ、政策にフィードバックする機能が重要であると考えます。地域課題の発見・解決は、「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」でも挙げられていますが、発見されたニーズを事業等に反映するにとどまらず、政策にフィードバックするには、調査・研究機能の強化が必要と考えます。たとえば、地域の女性たちの視点から自治体予算のジェンダー分析を行ったり、男女共同参画政策・計画の提言を行うような活動を支援することにより、女性の意思決定への参加を促進し、より効果的な男女共同参画政策・計画を立案することが可能になります。
また、DV相談だけにとどまらず、生活相談や労働相談も含む女性の権利侵害によりよく対応できるよう、財政や人材を強化し、相談機能の充実をはかることが望まれます。

2.運営のあり方について
◆基本理念に沿った評価基準の確立

 ますます多くの男女共同参画センター等が、数値による評価の対象となっており、その結果として、男女平等の推進という目的への貢献よりも、集客効果やコストダウンが重視されるようになっています。男女平等の実現、女性のエンパワーメントといったセンターの目的にそった評価基準の確立を明記すべきです。

◆指定管理者制度導入のガイドライン策定

指定管理者制度が導入される施設は増加していますが、多くの場合、行政のコスト削減が主な理由となっており、必ずしも男女平等の推進に専門性をもつ事業者が選定されているわけではありません。指定期間も短期のことが多く、安定した運営が保証されていません。また内閣府調査でも明らかなように、職員の労働条件に大きなしわ寄せが来ています。こうした現状を鑑み、指定管理者制度はコスト削減手段として安易に導入されることのないよう、施設の理念に沿った事業者の安定した運営と、職員の労働条件を保障するためのガイドラインの策定を明記すべきです。

3.職員の養成・待遇について
◆非正規職員の均等待遇の確保

 男女共同参画センター等の運営に不可欠な、ジェンダー/女性問題に関する深い理解や専門知識をもつ職員のほとんどは、非常勤や嘱託など非正規職員として外部から登用されてきました。多くの施設で非正規職員の基幹化が進んでいる一方、雇用形態はいっそう多様化し、劣悪化と不安定化が進んでいます。これら非正規職員は、賃金等の待遇面で差別されているだけでなく、施設における意思決定や情報共有、研修機会からも除外されており、長期的な人材育成・確保にも支障をきたす可能性があります。
 男女平等を基本理念とする男女共同参画センター等が、雇用形態の違いを理由に、ほとんどが女性である非正規職員を差別待遇することは許されません。むしろ率先して非正規職員差別を撤廃し、同一価値労働同一賃金実現のモデルをしめすべきです。すでに関西の男女共同参画センターでは非正規職員の正規化が予定されており、同一価値労働同一賃金に基づく雇用システムの創設の検討を掲げています。第三次基本計画においては、同一価値労働同一賃金の原則に基づく非正規職員の均等待遇の確保のため、雇い止めおよび有期雇用の廃止、産休・育休等の保障、実績に応じた正規雇用への登用および昇進などを含む具体的措置を明記するとともに、待遇改善のための予算措置を設けることを要望いたします。また、男女共同参画センター等の運営に必要な専門性の評価および育成方法の検討を求めます。

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★よりくわしくは、女たちの21世紀No.60【特集】女性センターはどこへいく?をご覧ください。

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