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朝鮮学校に襲撃

2014/02/07

1月22日午後0時15分頃、神戸市垂水区上高丸の神戸朝鮮高級学校3階に男性が侵入し、「お前、朝鮮人か」等と叫びながら、声を掛けた男性教諭 (25)に持っていた鉄の棒(長さ約40cm)で殴りかかる事件が起きました。学校長によれば容疑者との面識はなく、逮捕された無職の男性(38)は容疑 を否認しています。教諭は左腕を殴られましたが男性を取り押さえ、駆け付けた垂水署員が男を建造物侵入と傷害の容疑で現行犯逮捕しました。校舎にいた高校 生約170人にけがはありませんでしたが、同校では2010年3月にも、危害を予告する脅迫状とカッターナイフの刃が送り付けられる事件があり、生徒の安 全が危惧されています。
 時に暴力をも伴うヘイトスピーチ。これを放任することは、更なる加害を助長することにつながります。在日コリアン青年 の エンパワーメントを行うNGO、KEY(在日コリアン青年連合)は、この事件が発生した背景に日本各地でヘイトスピーチ(差別扇動)が頻発し、政府・自治 体によってそれが野放しにされている状況があるとして、今後のヘイトクライムの再発と凶悪化を抑止するために、日本政府が必要な対策を速やかに取ることを 呼びかける緊急声明を発表しています。以下に転載いたします。

                神戸朝鮮高級学校へのヘイトクライムに抗議し、
             再発防止のための対策を日本社会に呼びかけるKEY緊急声明

1.
  私たちは本事件が何よりも授業中の朝鮮学校内で起きたことに恐怖と憤りを禁じ得ない。青少年が自由に学び成長するのに必要な安心・安全が保障されるべき教 育現場において、またマイノリティである在日コリアン同士が安心して出会い学べる空間であり、歴史的にも連綿と守られてきた民族教育の現場において、決し て起きてはならないヘイトクライムが起きたこと自体が甚大な被害である。
 本事件は在日コリアンというマイノリティ集団に対するヘイトクライムである。したがって被害は朝鮮学校関係者にとどまらず、過去の差別のトラウマ的記憶を想起させるなど、程度の差はあれ一般の在日コリアンに対しても恐怖と悲しみと存在否定を突きつけた。
 本事件の被害回復のためにも、本事件の事実・原因が究明され厳正な対処がなされると同時に、国・自治体にヘイトクライムの再発防止策を講じることを強く求める。

2.
  本事件の恐ろしさの一つは、傷害など現行刑法でも犯罪とされている物理的暴力が行使されたことにある。2013年に大きく注目された街頭でのヘイトスピー チでも、また2009年以降の京都朝鮮学校襲撃事件などのヘイトクライムでも、現行刑法に触れるほどの傷害事件は報告されていない。
 本事件はしたがって、近年のヘイトスピーチ・ヘイトクライム頻発が他のヘイトスピーチ・ヘイトクライムを助長・煽動してきただけでなく、その結果として加害のレベルが着実かつ急速にエスカレートしつつあることを示唆するものだ。
 ヘイトクライムの加害性が従来とは異なる、現行刑法でも犯罪とされる傷害罪など物理的暴力を伴う段階にまでエスカレートすることを、日本政府・社会は何としてでも阻止しなければならない。
  私たちはかつて1960~70年代に日韓会談や外国人学校法案をめぐる情勢を背景として、多数の朝鮮高校の学生が殺傷された流血のヘイトクライムを想起す る。本事件のような、傷害など物理的暴力を伴うヘイトクライムを放置することは、事態がエスカレートすることを拱手傍観することにほかならない。

3.
  これ以上ヘイトクライムを悪化させず、再発を抑止するためにも、日本政府は差別禁止立法措置を求める従来の国連勧告を受け入れ、自らが批准した人種差別 撤廃条約を誠実に履行すべきである。少なくとも現行法でも十分に可能な、日本各地で頻発し深刻化するヘイトスピーチ・ヘイトクライムの差別実態調査を可及 的速やかに実施すべきである。日本政府は「正当な言論までも不法に萎縮させる危険性を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現 在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の煽動が行われている状況にあるとは考えていない」(2013年1月に国連人種差別撤廃委員会に提出された日本政 府報告書)としているが、実態に著しく反していることは幾多の報道やNGO調査報告等が明らかにしている通りである。国が実態調査すら着手せず上記主張を し続けていることは不誠実極まりないというほかあるまい。

4.
 そもそも日本の市民社会で頻発するヘイトスピーチ・ヘイトク ラ イムは、国・自治体による差別や政策によって煽動されてきた側面が強い。1980年代末以降の「チマチョゴリ切り裂き事件」などは「パチンコ疑惑」 (1989年)や「核開発疑惑」(1994年)など、日朝関係の悪化や政治家による民族団体・民族学校への差別発言などが起こるたびに頻発してきた。 2002年9月の日朝首脳会談後に日朝関係が極度に悪化しマスコミの日常的「北朝鮮バッシング」がはじまったことを背景として、当時半年間で「チマチョゴ リ事件」をはじめ少なくとも1000件もの暴力が報告された。
 近年これはますます酷くなっている。とりわけ2010年以降の国による朝鮮高校 の 高校無償化法の適用除外や、自治体による相次ぐ朝鮮学校への補助金削 減・停止・廃止は、国・自治体自らが日本社会に向けて「「朝鮮人は差別をしてもいいんだ」と煽動し、「差別のライセンス」を発行している」(前田朗東京造 形大教授)と指摘されるほど悪化してきた。特に昨年3月に東京都町田市が朝鮮学校の小学生だけに防犯ブザーを配布しない決定を下したことは「在日コリアン の子どもは犯罪に遭ってもよい」という社会的メッセージを与えているのである。これは直ちに良心ある人々の猛抗議を受けて後に撤回したものの、市は配布停 止措置の非を未だ公的に認めていないという。
 近年ヘイトスピーチ・ヘイトクライムがここまで酷くなったことは、上記のような国・自治体の差別が単に当事者の権利侵害の点で容認されるものでないばかりか、社会的差別を助長・煽動するという効果の点でも決して許されるものではないことを意味するのである。

5.
  私たちは人間性を根底から否定する卑劣なヘイトスピーチ・ヘイトクライムに断固として反対するとともに、在日コリアン青年の当事者団体として、私たちがま だ見ぬ、差別・疎外に悩む在日コリアン青年のためのエンパワーメント機会の提供や、在日コリアンの現状・歴史などに関する情報発信その他を通じ、ヘイトス ピーチ・ヘイトクライムの抑止のため、より一層の取組を行っていくことを、改めてここに宣言する。

2014年1月23日
在日コリアン青年連合(KEY)

【報道】
● 神戸:朝鮮高校に侵入、教諭殴る 容疑で男逮捕 垂水署(1/24)

在日コリアン青年連合による緊急声明の詳細はこちらから。

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