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第59回国連女性の地位委員会(CSW)開催 3月9日-20日

2015/03/30

ニューヨーク国連本部で開催された第59回CSWは「第4回世界女性会議から20周年にあたっての政治宣言」(”Political declaration on the occasion of the twentieth anniversary of the Fourth World Conference on Women” 以下「政治宣言」)を採択した。

今回の「政治宣言」はCSW会期前に各国政府代表によって起草され、会期前の3月5日付で公表された。CSW会期中の議論を経た結果文書を出さないことになっていたため、市民社会は公式文書策定に参加するプロセスから閉め出されたことになる。そのため「政治宣言」は一般的で弱い内容となった。

国際的なフェミニストのネットワーク「開発における女性の権利協会(AWID)」は第59回CSWについて「裏切られた北京」という見出しで手厳しい論評を出した。論者は「イスラム法の下で生きる女性たち(WLUML)」のメンバーで人権弁護士のNaureen Shameemは、このような書き出しで第59回CSWを総括している。

「第4回世界女性会議から20年を経て、世界中の女性と少女は今年のCSWの結果以上のものを手にするべきだ。北京を祝い北京宣言と行動綱領の実施を促進する公約を確認するこの時、女性たちが必要としないものは、現場の女性たちとの関わりを欠き、構想と公約を欠くことによる効力の弱い結果である。」

Shameemによると、今回の「政治宣言」はあまりに一般的で、CSWと国際人権の条約機構やメカニズム、原則とのつながりを無視している。北京宣言と行動綱領、女性差別撤廃条約の尊重は掲げるものの、国連加盟国と人権条約批准国政府が負う人権の促進、擁護、実現の義務、さらには人権侵害を防止する義務についての言及はない。各国政府の責任と課題があいまいになっているのは、市民社会を排除したプロセスによって女性たちの声が封じられていることに大きな原因がある。

こうした状況に対して、およそ1000の女性の権利グループの署名の下、国連と加盟国への批難声明が公表された。批難声明は、女性の人権に取り組む政治的意思を欠いた国連と加盟国政府による「政治宣言」は「北京宣言と行動綱領の目標水準に到達しない既存の公約の退屈な再確認であることの表れであり、実際のところ大きな後退の恐れとなっている」と指摘している。

Shameemの指摘によると、「政治宣言」ではジェンダー正義と女性の人権に関する多くの主要な言語が消去あるいはあいまいにされている。これまでのCSWで言及されてきた「女性の性と再生産に関する健康と権利」に関して、今回の「政治宣言」では何も言及されていない。持続可能な開発に欠かせないジェンダー平等の実現に関する各国政府の責任があいまいにされている点も、ポスト2015開発アジェンダの策定過程に及ぼす否定的影響が懸念される。今日の世界的な課題である気候変動、宗教・文化・伝統の解釈によって権利を否定し暴力を正当化する傾向、女性の人権活動家への暴力、経済的不平等の増加についても触れられていない。

「政治宣言」が事前に政府間で策定された閉鎖的プロセスと並び、CSWの「作業方法をめぐる決議」をめぐっても、市民社会の参加を制限する方向性が大いに危惧される。今後のCSWの協議と意思決定過程のあり方を示す「作業方法をめぐる決議」には人権の視点が希薄で、女性やフェミニストの組織が制度的にCSWのプロセスから排除される危険性がある。この「作業方法をめぐる決議」に対して、325団体の署名による「わたしたちのことを、わたしたち抜きに決めないで! CSW作業方法決議についての声明(Nothing About Us Without Us! Statement On The CSW Methods Of Work Resolution)」が会期中に公表された。

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日本に関連する動きでは、NGOパラレルイベントで3月9日に「『慰安婦』に真実と正義を-第二次世界大戦中の日本軍性奴隷制」がヒューマンライツナウ(HRN)、ピースボート、女たちの戦争と平和資料館(WAM)、台北婦女救援基金会の共催で行われ、HRNの伊藤和子弁護士、WAMの渡辺美奈事務局長、台湾の婦援会のカン・ホーシュアさん、アメリカの人権団体のケリ・ムデルさんらが発題した。

同日9日は、日本の歴史修正主義者・「慰安婦」否定論者らが内閣府男女共同参画会議議員の高橋史朗や在特会、なでしこアクションの関係者をスピーカーに揃えた集会を開いた。在NY日本人やアジア系アメリカ人、反核運動の活動家らが連携し、日本の極右歴史修正主義・人種主義者への抗議の声を集め、当初予定されていた会場のニューヨーク日本人会は会場提供をキャンセルした。

3月10日、日本政府代表の宇都外務大臣政務官がCSWにてステートメントを発表し、安倍首相が旗を振る「女性が輝く社会」づくりという「女性活用」への取り組みを国際社会にアピールした。武力紛争下の女性に対する暴力撤廃が喫緊の課題であるとして、アフリカ諸国での関連プロジェクトに16億円拠出することを表明。しかし長年日本が問われている日本軍「慰安婦」問題についてはステートメントでの言及はない。人権、女性の人権、差別撤廃という基本用語も文書には用いられていない。

第59回国連女性の地位委員会一般討論ステートメント(和文仮訳)/(英文)

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