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スラジュ事件:国の責任認められず

2016/01/21

2016年1月18日、東京高等裁判所は、強制送還中の機内でガーナ出身のアブバカル・アウデゥ・スラジュ(Abubakar Awudu Suraj)さんが死亡したのは入国管理局職員の制圧によるものではないとして、第一審の判決を取り消し、訴えを退けた。

2010年3月、スラジュさんは、法務省東京入国管理局が成田空港から強制送還しようとした機内で急死した。このとき入管職員らは、スラジュさんにタオルで猿ぐつわをかませ、金属手錠と拘束バンドで両手首を縛り、前かがみになる体制を強制していたことが明らかになっている。

スラジュさんを支援していた支援団体「APFS(Asian People’s Friendship Society)」によれば、それまでスラジュさんは20数年間、日本に住んでおり、日本人の配偶者もいた。不法滞在となってしまったことについては深く反省をしており、当時、法務大臣に対して在留特別許可を求めていた。しかし、こうした状況を全く無視するかのように、東京入国管理局の執行部門はスラジュさんの強制送還を強行したのだ。

2014年3月19日、東京地裁は、入管職員らの制圧行為によってスラジュさんが窒息死したことを認め、国側の「死因は不整脈」とする主張を退けていた。

しかし今回の判決で東京高裁は、死亡の原因は前かがみの姿勢をとったことによる窒息死ではなく、スラジュさんがもともと患っていた心臓疾患によるものだとして原判決を取り消した。

暴力的な制圧行為があったにも関わらず、入管職員の行為は相当性のあるものであり違法性はないとしたことについて弁護団は会見で、「裁判所は少数者の人権を守るという本来の役割を果たしていない。上告を検討する」と話した。

【関連情報】
◆APFSのブログ
【報道】
◆NHK(1/18)強制送還のガーナ人死亡で遺族逆転敗訴 ◆朝日新聞(1/19)急死ガーナ人男性の妻「物のように扱われ死んでいった」

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