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文科省が「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点(通知)」送付

2016/04/28

文部科学省は2016年3月29日、28都道府県の知事宛に「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」という文書を出した。
この文書には「朝鮮学校に関しては、我が国政府としては、北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております」とあり、朝鮮学校に対する否定的な見解が強調されている。そして、朝鮮学校への補助金交付について、「朝鮮学校に係る補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する十分な御検討とともに、補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保及び補助金の趣旨・目的に関する住民への情報提供の適切な実施をお願いします」と続く。朝鮮学校の補助金交付停止の自粛を求めていると受け取れる内容だ。
今回の経緯を振り返ると、文科省からの通知以前の2月7日、自由民主党から「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」が発出されている。その中には、朝鮮学校の補助金交付について、地方公共団体に対して公益性の有無を厳しく指摘し、全面停止および住民への説明を行うことを指導・助言するよう求める提言も含まれている。

これまで地方自治体は、在日コリアンの「朝鮮学校に学ぶ権利」を保障する上で、重要な役割を果たしてきた。1965年の文部次官通達で、「朝鮮学校は、各種学校として認可すべきではない」とする中で、知事たちは良識に基づき、すべての朝鮮学校を認可してきている。朝鮮学校は、かつての植民地支配によって奪われた言語や歴史、文化を継承するために、在日コリアンがつくり上げてきた学校であり、その歴史的経緯を無視することはできない。また、子どもたちの教育を受ける権利の侵害は、日本国憲法、また国際人権規約に照らしても許されるものではない。文科省の通知では、このことに全く言及されていない。

馳浩文部科学大臣は3月29日の記者会見で、「朝鮮学校に補助金を出す権限は自治体側にありますので、私としては留意点 を申し上げただけであって、減額しろとか、なくしてしまえとか、そういうことを言うものではありません」と述べている。
今回の通知については、さまざまな団体から抗議の声が上がっている。「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会は、この通知が朝鮮学校に対する補助金廃止の差別を誘発しかねないとして、各知事宛に書簡を送付した。

<参考> 
自民党「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」(2016年2月7日)
自民党拉致問題対策本部 「対北朝鮮措置に関する要請」(2015年6月25日)
平成28年3月29日(火曜日)に行われた、馳浩文部科学大臣の定例記者会見

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