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『女たちの21世紀』78号出版記念トークイベント「女が憎くて仕方ない!!―ホモソーシャルなインターネットと嫌韓」報告

2014/09/01

アジア女性資料センターでこの夏からボランティアをしているミンズです。先週の8月28日(木)に、『女たちの21世紀』78号出版記念トークイベント「女が憎くて仕方ない!!―ホモソーシャルなインターネットと嫌韓」に、参加者として行ってまいりました。
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ゲスト・スピーカーは、「女たちの21世紀」78号でも寄稿してくださった貝和里江さん。インターネット上、特に匿名で投稿可能な掲示板、「2ちゃんねる」上の嫌韓の論理とミソジニー(女性嫌いの言説)の論理が極めて似通っていることや、実際に「朝鮮人(女)は○○である/する」と、朝鮮出身の人々と日本人女性との「共通点」をいくつも羅列して書かれる場合もあることなどについての、鋭いご観察からのご指摘を伺うことができました。

「2ちゃんねる」では、女性発言者は排除される扱いを受けるため、女性に「許された」ページでの書き込みに収めるか、もしくは男性言葉を使ったり、男性に同意して女性を貶めるような発言をしたりすることで、排除されないようにしているとのことでした。
また、「2ちゃんねる」の古参の利用者たちは、いわゆる「リアル」と「非リアル」に対して厳格かつシニカルな人々であり、ネットの言説(=非リアル)を現実世界(=リアル)でヘイト・スピーチとして行動する人々に対し、「粋ではない」と馬鹿にするような風潮があること。そうは言っても、現在ヘイト・スピーチのデモを行った件で裁判中のヘイト・クライム団体の中心人物たちは、「2ちゃんねらー」(=「2ちゃんねる」のユーザー)であったこと、すなわちネット言説といって馬鹿にすることなかれ、現実に暴力となって勢力を拡大している…というご指摘も、はっとさせられました。
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それから、「2ちゃんねる」のような自由にアクセスできる掲示板ではなく、掲示板の内容をまとめた、いわゆる「まとめサイト」がヘイト・スピーチの拡大に一役も二役も買っている、というお話も非常に興味深かったです。「まとめサイト」とは、が同じ画面に登場し、その広告をクリックして買い物などをすると、その分け前としてサイトの運営者が報酬をもらえる「アフィリエイト」という広告の仕組みです。
このようなサイトはビジネス目的で運営されており、「2ちゃんねる」以外のさまざまなインターネット掲示板を扱っていますが、そのなかでも「2ちゃんねる」は特に多く取り扱われています。まとめ方は、完全にサイト運営者の自由で、宣伝効果をあげるためにより多くの人の目をひきつけることができるよう、サイト管理者はさまざまな工夫を凝らします。管理者は採用する書き込みを選び、順番も入れ替え、視覚効果も大きくするために文字の色や大きさも変えて、そのページを作ります。「キャッチーで儲かるサイトやページを作り上げる」ために、「女を殺したいんだが」「朝鮮人は○○だ」などと、見るのもはばかられるようなタイトルがつけられ、記事をまとめられます。

そのようなセンセーショナルなページが、経済的収益を目的に作られること自体が続いた結果、たとえば学生が「インターネットで始めて本当のことを知った」と、ネット上の作り変えられたストーリーを信じてしまったり、学校で「布教活動」をしようと、「まとめサイト」から得たヘイト・スピーチを撒き散らしてしまったり、差別用語をレポートに使用したりする…という現実も教えていただきました。(しかし、このような行動も、古参の「2ちゃんねらー」からは非常に馬鹿にされ、現実生活でネット言説を真に受けたり行動に移したりするのは、嘲笑されるそうです。)
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参加者の方々からは、「嫌韓のヘイト・スピーチはこれまで女性たちが長年こうむってきた言説そのものであり、その根は深い。」と、実感のこもったお話を伺うこともできました。
また「2ちゃんねる」が、10年ほど前であれば、まだ女性も男性と対話が可能であったり、一方的な意見だけにさらされずにさまざまな人が議論しあう土壌があったりしたが、ここ数年で非常に排他的で暴力的になり、現在は見ることもためらうという話も聞かれました。やはり、参加者の方々のなかにも、「貝和さんはなぜこのような厳しい、つらい言説の飛び交うサイトを見続けることができるのか」といった質問も出て、非常に盛り上がりました。

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