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【特別掲載】ブックガイド 「けーし風」編集者が選ぶ13冊

2014/08/20

【事務局より】
以下はアジア女性資料センターが発行する「女たちの21世紀」の2012年9月号【特集】「沖縄-女性の視点から植民地主義・軍事支配を問う」に掲載された記事です。いま沖縄・辺野古では反対する住民を強制的に排除して、新基地建設に向けた作業が強行されています。このような状況の中、私たちは沖縄に何を学び、何をするべきなのか・・・。「けーし風」の編集者・岡本由希子さんが、沖縄に学ぶための書籍を紹介してくださった記事を今回、AJWRCブログで特別公開します。私たちは沖縄を取り巻く問題にどう向き合うのか。考え行動をおこすきっかけになることを願って。

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【「女たちの21世紀」71号より特別掲載】

ブックガイド 「けーし風」編集者が選ぶ13冊

沖縄を取り囲む状況に対して「返し風」を、という意味で名づけられ、1993年から発行されている那覇発の季刊誌「けーし風(かじ)」。その編集をしている岡本由希子さんに、特に女性の視点から「沖縄」に学ぶための13冊をセレクト、解説していただきました。

★「復帰」40年・沖縄のいま

時の眼—沖縄——復帰40年の軌跡
比嘉豊光・山城博明写真展 図録集

琉球新報社 2012年刊
B5判並製 168頁
1970年の大学写真部時代から現在まで沖縄を撮り続けた2人による、写真展の図録。多数の論者による写真に添ったテーマの論考を収録し、撮られた「過去」と「現在」をつないで、この40年に沖縄がくぐってきた経験を検証し、未来を眼ざす強度へと転化する。

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時の眼ー沖縄―復帰40年の軌跡 比嘉豊光・山城博明写真展図録集

沖縄——アリは象に挑む
由井晶子 著
七つ森書館 2011年刊
A5判並製 244頁
沖縄タイムスの第一世代女性記者で編集局長・論説委員を歴任した著者による、1998年から2011年春までの『労働情報』連載をまとめた、激動する沖縄のクロニクル。住民運動に寄り添いながらもクールに全体の政治状況を見渡し分析する鋭利な筆致で、象(国家)に挑むアリ(民衆)への賛歌をうたいあげる。

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沖縄―アリは象に挑む

本土の人間は知らないが沖縄の人はみんな知っていること——沖縄・米軍基地観光ガイド
須田慎太郎(写真)・矢部宏治(文)・前泊博盛(監修)
書籍情報社 2011年刊
四六判並製 352頁(オールカラー)
ガイドブックの体裁をとりつつ、28カ所の在沖米軍基地を現場検証、背景を説明する流れのなかで、沖縄に来ることで初めてくっきりと見えた「日本問題」、憲法、日米安保、戦後史への問いを厳しく投げかけている。

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本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド

オスプレイ配備の危険性
真喜志好一、リムピース+非核市民宣言運動・ヨコスカ 著
七つ森書館 2012年刊
A5判並製 148頁
焦眉の課題「オスプレイの普天間配備」問題、沖縄では9月9日に抗議の大規模な県民大会が開催される。県議会とすべての市町村議会が反対決議をしているなかで配備が強行されるならば、実力行使で普天間基地閉鎖だとの声が日増しに強くなってきた。これまでオスプレイ問題を追及してきた市民運動の成果を一冊にまとめた本書は、オスプレイ配備阻止とは命を守るたたかいであると同時に、民主化運動であることを示している。

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オスプレイ配備の危険性

★沖縄戦を問い直す

沖縄戦新聞(1号〜14号)
琉球新報社 2006年刊
新聞紙 60頁(A4判変形函入)
戦場の沖縄をリアルタイムで報道したら…「サイパン陥落」に始まり「対馬丸沈没」(2号)「10・10空襲」(3号)から「日本守備軍が降伏」(14号)へと至る沖縄戦の過程を、現在の情報・視点と体験者の証言を盛り込み新聞の形で構成。体験者が少なくなりつつあり沖縄戦の記憶の継承が課題となっているなかで、媒体の形式が持つ喚起力を駆使して「戦場」を現在に引き寄せる試み。

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沖縄戦新聞―沖縄戦60年

[新版]母の遺したもの——沖縄・座間味島「集団自決」の新しい証言
宮城晴美 著
高文研 2008年刊
四六判並製 288頁
「集団自決」の過酷、そして、本書がくぐった過酷(裁判闘争、そして新版刊行…)。容赦なく繰り返し他方から加えられる攻撃に、それでもサバイバルせんとする強靱な意思。本書を支えているのは島の女性たちの精神の紐帯なのだと思う。

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母の遺したもの―沖縄・座間味島「集団自決」の新しい証言

戦場の宮古島と「慰安所」——12のことばが刻む「女たちへ」
日韓共同「日本軍慰安所」宮古島調査団 著
洪@伸(ホン・ユンシン) 編
なんよう文庫 2009年刊
四六判並製 288頁+カラー口絵8頁
本書は戦時の宮古島で「慰安婦」を見た人びとの証言集として、証言を聞いた人びとの報告集として、さらには聞き取り調査の過程から島に「慰安婦」の碑を建てるにいたった運動の記録として、ポリフォニックに編まれている。多声の響き合いが、かつて、そこに、いた、女性たちの姿を、島の風景のなかに召喚する。

戦場の宮古島と「慰安所」
戦場の宮古島と「慰安所」

赤瓦の家——朝鮮から来た従軍慰安婦
川田文子 著
筑摩書房 1987年刊
四六判上製 268頁
この6月に那覇市歴史博物館で開催された「沖縄戦と日本軍『慰安婦』」展は大きな反響を呼び、自らが眼にした「慰安婦」「慰安所」を話す来場者も多かった。同展の一角を占めたのがペ・ポンギさんに関する展示で、生前の写真や遺品(質素だが丁寧に磨き込まれた鍋、お玉など)が放つ何かが場を支える背骨であったように思う。本書は生前のペ・ポンギさんに聞き取りし、また戦場となった島の実相に迫った、必読の古典的ドキュメント。

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赤瓦の家―朝鮮から来た従軍慰安婦

★島に生きる思想

沖縄文学選——日本文学のエッジからの問い
岡本恵徳・高橋敏夫 編
勉誠出版 2003年刊
A5判並製 432頁
久志富佐子「滅びゆく琉球女の手記」とその「釈明文」(1932)、吉田スエ子「嘉間良心中」(1984)、崎山多美「風水譚」(1997)と、女性作家による同時代を根底から撹乱し画期をなした作品を収録している。文章の襞に織り込まれた深い情動と強靱な批判精神に注目されたい。

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沖縄文学選―日本文学のエッジからの問い

琉球布紀行
澤地久枝 著
新潮社 2000年刊
四六判仮フランス装 230頁
琉球弧の布に惹かれて、織り、染める人を訪ねた著者の歩みとともに辿る、島々の歴史、人びとの物語、そして戦争の傷跡。喪われた数々の技法の復興に尽力した大城志津子の生を描いた章は圧巻。

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琉球布紀行

[沖縄大学地域研究所ブックレット11]
アジアのなかで沖縄現代史を問い直す——新崎盛暉『沖縄現代史』韓国版・中国語版刊行記念シンポジウム

「方法としてのアジア/方法としての沖縄」研究会 編
沖縄大学地域研究所 2010年刊
A5判並製 114頁
副題のシンポジウムの全記録。屋嘉比収(沖縄)、孫歌(中国)、陳光興(台湾)、鄭根埴(韓国)が、新崎の同著をてがかりに現代アジアにおける沖縄の歴史的経験の意味を問い直し、それぞれの地域が抱えている問題を克服する連帯の可能性と東アジアの平和への希求を語りあう。

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琉球語の美しさ
仲宗根政善 著
ロマン書房 1995年刊
四六判並製 228頁
「ことばはいつも生命とひとつながりである。生命の底からのひかりにかがやいている」——ひとつひとつの言葉に籠められた民衆の生活誌を描き、生まれ島への限りない愛着と、「言葉」の持つ本質的な孤独を、清澄な文体で綴った随想集。

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「ひめゆり」たちの声——『手記』と「日記」を読み解く
仲程昌徳 著
出版舎Mugen 2012年刊
A5判上製 222頁
『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』と、「ひめゆりの塔の記」と題された「日記」を丹念に読みこんで、仲宗根政善という「ひめゆり」とともに生きた類い稀なるひとの精神の奥に分け入り、「近代化のもたらした惨劇に身をよじらせる苦悩」に迫る。

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「ひめゆり」たちの声―『手記』と「日記」を読み解く

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