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『女たちの21世紀』no.77より新着資料 part2

2014/04/03

『女たちの21世紀』no.77から、書評の第2弾をお届けします!

性と法律 変わったこと、変えたいこと
角田由紀子 著
岩波書店 2013年

 

 

 

 

 

 

 

離婚・雇用・DV・セクハラ・性暴力・売買春と、女性問題が一
望できる充実した内容の本書において、それらを単に紹介として留
めるのではない。法律が守るのは、家父長制における男性中心の秩
序だというジェンダーの視点を常に持ちながらの透徹した分析評価
を展開している。性暴力における強姦神話、セクハラやストーカー
被害における女性にのみ課せられる同調圧力等々を鋭く告発もして
いるのだ。
著者は弁護士として個別問題の解決に尽くしたのみならず、新法
の制定にも多大なる貢献をしてきた。多くの女性たちの悔しさと哀
しみに寄り添い、法律を専門家による衒学的なものから、血の通っ
たものに変えていく様は当事者と共に取り組む女性運動のあるべき
姿を提示している。女性運動が女性の権利を守る法を創ってきた経
緯を示す下りは、運動の豊かさを物語る。
一方で、民法、売防法等、いまだ変わらず女性を貶め、苦しめる
状態である矛盾も突いており、私たちは、今後の運動の課題への貴
重な問題提起を得ることができる。性産業に従事する女性の困難は
女性であれば誰もが遭遇し、性と生はつながっているという見解
は、法律の枠にとどまらず、女性運動の普遍的な立ち位置を示すも
のとして貴重だ。                 (渡辺照子)

ルポ虐待
大阪二児置き去り死事件
杉山春 著
ちくま新書 2013年

 

 

 

 

 

 

 

「誰も助けてくれないと思っていた。助けてくれそうな人は思い
つかなかった。」2人のわが子を放置して死なせた母親の言葉は、
子どもらを置き去りにした母親自身がまず社会からネグレクトされ
ていたことを物語る。
本書に「大きく日本が変容する。この事件はその先駆け」とあるが、
「絆」という言葉が安売りされる昨今、この「変容」は、「絆」が
家屋の柱を瓦解させる白アリに巣食われた結果そのものだ。元夫を
はじめとする周囲の人間は子どもらの養育を母親ひとりに押しつけ
た。あたかもそれが母親の更正かペナルティであるかのように。
母親が離婚の際に書かされた誓約書には、子育てについては「家
族に甘えない」とあり、ひとりだけで育てることが事実上強要され
た。母親の幼少期からの複雑な家庭環境、記憶が消し飛ぶほどの残
酷な性暴力被害が自尊感情を奪い、自己主張の力を奪われたあげ
く、最悪の結末を迎えたのだ。誰かを責めるだけで事件の本質を暴
くかのような取材とは一線を画す。
若い母親がひとりで幼子を育てるには、この母親のように風俗業
に従事せざるを得ない周辺状況も取材し、丹念な事実の積み重ねに
よって、この悲惨な事件の生まれた背景を浮かび上がらせる。その
筆致こそまさにルポルタージュだ。         (渡辺照子

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