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【資料紹介】アジア津波の経験に学ぶ

2011/08/05

「日本政府は東日本震災の復興過程に女性の平等な参加を保障すべきだ」という意見書を出してくれた国際女性団体「APWLD(アジア太平洋女性法律開発フォーラム)」が、「ぜひ日本でも参考にしてください」と、2004年のアジア津波のあと、被害を受けた各国の女性たちにどのような影響が出ているかを調査してまとめた報告書を、5冊まとめてプレゼントしてくださいました。

アジア数カ国に多大な被害をおよぼした津波のことは、現在ではほとんど忘れ去られていますが、レポートを読むと、いまだに多くの人々の状況が改善していなかったり、むしろ悪化していることに驚きます。とくにジェンダー関係への影響はすぐには見えてこないため、長期にわたる災害復興過程のモニタリングが、ジェンダーの視点に立って、行われる必要があることがわかります。

東日本震災の復興計画にかかわる人、関心をもつ人には、ガイドラインだけでも、ぜひ読んでいただきたいです。

 

 

 

 

 

 

Guidelines for Gender Sensitive Disaster Management: Practical Steps to Ensure Women’s Needs are Met And Women’s Human Rights are Respected and Protected during Disasters (ジェンダーに敏感な災害管理ガイドライン:災害の下で女性のニーズが満たされ、女性の権利が尊重され保護されるよう確保するための実践的ステップ)
発行:Asia Pacific Forum on Women, Law and Development (APWLD) 2006

2004年のインド洋沖津波後のインド、インドネシア、スリランカ、タイ、および2005年のパキスタン地震後に行われた女性の権利状況に関する現地調査をもとにまとめられたガイドライン。緊急支援から中期的対応、長期の復興開発にいたる各過程において、女性の権利を保護するために政府やNGO、市民社会にもとめられるポイントをわかりやすくまとめてあります。

目次から一部を抜粋:
<復興過程における長期的対応>
回復・復興の意思決定過程への女性参加
女性と家族のニーズにあう住居復興
土地、家屋、財産に対する女性の平等な所有権
職業機会への女性の平等なアクセス
女性の人権意識の啓発
女性の人権擁護活動の奨励
移住女性の保護
寡婦、女性世帯、障害女性、高齢女性へのリーチアウト
・・・

 

 

 

 

 

Tsunami Aftermath: Violations of Human Rights of Dalit Women, Tamil Nadu, India
インドのタミルナードゥ州で行われた調査をまとめたレポート。復興支援においてもダリットに対する差別・排除が反映されていたこと、女性に対する新たな形態の暴力について指摘。

 

 

 

 

 

 

Tsunami Aftermath: Violations of Women’s Human Rights in Sri Lanka
15年も続く紛争によってすでに疲弊していた地域を襲った津波によって、さらに多くの女性たちが生活困難に陥ったスリランカ。特に、政府の支援が「世帯主」を対象にしていたために、多くの女性が排除されたという指摘は重要です。

 

 

 

 

 

 

Tsunami Aftermath: Violations of Womens Human Rights in Thailand
津波の後の復興支援において、移住女性や漁民の女性などが疎外された状況を、調査にもとづいて分析。特に深刻なのが、災害後の土地問題で、多くの小規模漁民たちが、土地への権利を保障されなかったことが報告されています。

 

 

 

 

 

Tsunami Aftermath: Violations of Women’s Human Rights in Nanggroe Aceh Darussalam, Indonesia
インドネシアのアチェでは、食料や水など基本的な生活物資の不足に加え、武力紛争によるコミュニティの分断が、復興過程において大きな問題となっている実態がレポートされています。

これらのレポートは、APWLDのサイトからもダウンロードができます。

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