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映画「冬の小鳥」を観に行ってきました!

2010/08/22
10月から岩波ホールで上映されるフランス映画『冬の小鳥』の試写会に行ってきました!
監督のウニー・ルコントは韓国系フランス人。これがほぼデビュー作だとはとても信じられないほど、よけいなものを一切省いた禁欲的な作法でつくられた、見事な作品だ。
物語は、ルコント監督自身の体験にもとづいている。大好きだった父親に捨てられ、孤児院に預けられた9歳の少女ジニ。小さな体にあまるほどの絶望の大きさにもがき、やがてその痛みを受け入れ生きていく覚悟を固める少女のまなざしには、観る者の安易な同情をゆるさない悲壮な力が光っている。
1970年代の韓国で、親という後ろ盾をもたない少女たちが選べる道は限られていた。国際養子となって海外に渡るか、そうでなければ、障害をもつ年長の少女イェシンのように、一生を農村の下働きとして送るほかない。だから、施設でジニの唯一の友だちとなるスッキは、西洋人夫婦に選んでもらえるよう、まだ初潮を迎えていない幼い賢い少女として必死に自らをアピールする。
世界のなかに自分の居場所をもたない少女たちの絶望を、ルコント監督は内面に立ち入って語ろうとはせず、あくまで抑制のきいたカットを重ねることで、おどろくほど複雑な感情をうかびあがらせる。自殺をはかったイェシンが、施設の教員や子どもたちの前で反省の弁を述べながら笑いだしてしまう場面は忘れがたい。
フランスへ養子にもらわれていくことになったジニが見せる笑顔、そしてラストシーンの美しさ。シンプルにそぎ落とされた物語と表現の中から、ゆたかな感情をひきだしてみせる、美しい傑作である。
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