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【北京報告】⑤政治宣言交渉大詰め、右派も活発に

2005/03/04

北京+10報告

3月3日 政治宣言交渉大詰め、右派も活発に

政治宣言の採択をめぐって政府が今日の2時から交渉に入るため、ロ
ビイングをするならその時間までという情報。EUもアメリカに対抗して
提案を出すという。

アメリカの右派も今日は大挙して押し寄せてきた。一見してフェミニ
スト参加者と見分けのつかない女性たちもいるが、「アメリカの修正案
を支持しよう」というチラシをまいている。いかにもロビイストっぽい
男やアメリカ国旗色のネクタイをつけたおっさん、「motherhood」と
いうバッジをつけた修道僧みたいな人も。ひとりの女性に話を聞く。

「私たちは国連が国際人権の名前で国家の主権を侵害していることを
心配しているの。中絶を非合法化するのは国家主権です」という。「あ
なたはアメリカの主権のことを心配しているんですか、アメリカは世界
一強力な国でしょう」というと、「いや私たちが心配しているのはアメ
リカだけではなくてアフリカやアジアの国々です」という答え。それが
主権の侵害だと思うんだけどね…。彼ら右派のとなりでは、ラテンアメ
リカの若い女性たちが性と生殖の権利をうったえるステッカーをまいて
いた。

右派が配っていたチラシには「すでに50カ国以上がアメリカの提案を
支持しています」と書いてあるが、実際にアメリカに同調している国は
ほとんどないと聞いている。ミレニアム開発目標と行動綱領の関連につ
いての今日の本会議でも、多くの国がセクシュアル・リプロダクティ
ブ・ライツ/ヘルスはミレニアム開発目標を達成するうえで不可欠との
立場を表明。カンボジア政府代表は「中絶」という言葉を入れて、リプ
ロダクティブヘルスライツはもっとも重要であるとのべた。

こういう政府発言を聞くにつけ、昨日の唖然とするような日本政府代
表発言に頭が痛くなるが、幸い同調国として日本の名前は挙がっていな
い。昨日の発言で気をもんだNGO数名の有志で、事務局案を指示して欲
しいとのかんたんな要請文を作って今日政府代表に渡したが、立場は変
わっていないので心配いらないということだった。昨日の記者会見でも
再確認すると言っていたらしいので、やはり再確認の立場は崩さないが
アメリカに表立って盾つきたくないというのが昨日のわけのわからん発
言の背景のようだ。それにしたって、どこからも評価されない、みみっ
ちいやり方である。アメリカが修正をとりさげたという報道が出ている
ようだが、今日の午後の時点では、一部は取り下げるものの「新しい国
際人権を作らない」との挿入をあいかわらず主張しているということだ
った。

政治宣言採択の一方、新しい懸念事項として来週検討される政府決議
の問題があがってきた。アメリカが非常に問題のある決議案を2本提出
しようとしているらしい。ひとつは人身売買、ひとつは経済と女性に関
して。これは明日にでもよりくわしい内容がはいってくるだろう。NGO
としては情報収集をすすめつつ、これにカウンターとなるような決議を
協力的な政府を通して提出してもらったり、本会議中のNGO枠を使って
NGO声明を出すことにしている。日本の場合は、政府代表団にNGOが入っ
ていても、ロビイングどころか情報を取るのさえ難しいというのが現
実。明日は初の日本政府ブリーフィングだが、さて行く意味があるのか
どうか。

本山央子

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