アドボカシー・キャンペーン

COVID-19とジェンダー: 分断と差別ではなく権利と連帯にもとづく対応を

2020/04/03

(更新:2021/03/10)

COVID-19と呼ばれる新型ウイルスの感染が日本と世界で広がりつつあります。政府の対応や社会の反応によっては、すでに社会に存在する差別と分断をいっそう拡大し、もっとも弱い立場の人びとをさらに苦しめる結果を招きかねません。
このグローバルな健康危機に対し、分断と差別ではなく、権利と連帯によって対応していくためには、ジェンダーと複合的な視点からの分析が欠かせません。このページでは、フェミニスト視点による国内・海外の情報を随時共有していきます。

 

なぜジェンダー視点が重要なのか?
東日本大震災など過去の災害においても、平常時からの意思決定における女性の不在や、社会的・経済的なジェンダー不平等が、危機への対応において強く現れ、危機が過ぎ去ったあとにも、女性・少女の権利に長期的に影響をおよぼすことが指摘されています。また危機時には、国籍や民族による排除・差別もしばしば激化します。女性たちの中でも、外国籍の女性、シングルマザー、障害をもつ女性、性産業に従事する女性たちは、いっそう厳しい状況におかれることがあります。
すでに世界各地で、COVID-19は、以下のような深刻なジェンダー影響をもたらしていることが指摘されています。

  • COVID-19による深刻な経済的打撃は、不安定な条件と低賃金ではたらく労働者に深刻な打撃をあたえています。その多くは女性ですが、政府の経済対策では、移住労働者を含む非正規労働者への経済支援はしばしば後回しにされています。また女性たちは貯蓄も少なく、男性に依存するものとみなされていることから、経済的支援へのアクセスが困難になってしまいます。
  • 病院や介護施設ではたらく保健・介護従事者の多くが女性です。また女性たちはしばしば家の中でも家族の健康管理やケアを無償で担っていることから、大きな負担を負っています。
  • 多くの地域で行動制限や自宅待機が導入されていますが、多くの女性や子どもにとって、自宅は安全な場所とはいえません。DVの増加が各地で報告されています。

COVID-19への対応が、日本社会にすでに存在するジェンダーや人種、国籍、職業等による不平等や差別をさらに拡大させることを防ぎ、より弱い立場におかれた人たちへの人権にもとづく支援がなされるように、ジェンダーを含む複合的なフェミニスト視点による分析を強化し共有していく必要があります。

 

世界の状況に関する性別・ジェンダーデータ

▶︎COVID-19: Emerging gender data and why it matters (UN Women) (英語)

刻々と変化する世界各地の感染者の性別年齢別データや、女性が多くを占める保健ワーカーへの影響に関するデータを概観できます。

▶︎COVID-19 Global Gender Response Tracker (UN Women・UNDP) (英語)  / 日本語説明 (アジア女性資料センター)

UN WOMENとUNDPが共同で開発した、世界各国の新型コロナウイルス禍対応におけるジェンダー考慮の度合いを分析するデータベースです。

 

国連の情報・ガイドライン

国連諸機関より、人権、ジェンダー、移民や難民の権利という観点から、政府のコロナウイルス感染症対応について重要な情報とガイドラインが示されています。これらは日本政府による対応においても基礎とされなければなりません。

▶︎「女性を前面に、女性を中心に」プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長のメッセージ(2020/3/20)(国連ウィメン日本協会) 英語原文

▶︎「女性とCOVID-19:いますぐに政府ができる5つのこと」アニタ・バティアUN Women 副事務局長のメッセージ(2020/3/26)  英語原文 日本語訳 (アジア女性資料センター)

▶︎「難民、移民、無国籍者の権利と健康は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応において保護されなければならない」(2020/3/31)国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)/ 国際移住機関(IOM)/ 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) / 世界保健機関(WHO)共同プレスリリース

▶︎「女性と女児に対する暴力:影のパンデミック(世界的大流行) 」(2020/4/6)(UN Women日本事務所)

▶︎国連事務総長による政策ブリーフ「COVID-19の女性に対する影響」(2020/4/9)(英語)

▶︎「パンデミックは、ジェンダー中立的ではない。ジェンダー分析によって改善する、感染症の突発的発生への対応策」(2020/4/20)(国連軍縮研究所) 英語原文 日本語訳(アジア女性資料センター)

▶︎国連人権高等弁務官事務所のガイダンス(ARC平野裕二の子どもの権利・国際情報サイトへ)

 

フェミニスト団体の声明

▶︎ネオリベラル資本主義の失敗、COVID-19で鮮明に――フェミニストのグローバルな連帯を」(APWLD)

▶︎グローバル・サウス及びグローバル・ノースの周辺化されたコミュニティのフェミニスト・女性人権団体声明」(Feminist Aliance for Rights)

▶︎「バーチャル世界を通して政治的に組織化するフェミニストの経験」(AWID)

▶︎危機におけるケアと繋がり:COVID-19に立ち向かうためのフェミニスト戦略」(MADRE)

▶︎「今必要なのはウイルスとの「戦争」ではない」(シンシア・エンロー/WILPF)

▶︎「COVID-19:COVID-19は私たちに、ネオリベラリズムの何を教えてくれているのだろうか?」(WILPF)

▶︎「危機から新しい社会契約(ソーシャルコンパクト)へ:包括的で交差的なフェミニストのアプローチこそ新型コロナウイルスの危機から抜け出す唯一の方法」 (Women in Migration Network)

▶︎「新型コロナウイルスと将来に関する『グローバルヘルスにおける女性』の声明」(Women in Global Health)

グローバルな人道支援とジェンダー影響

▶︎「開発および人道的状況下におけるCOVID-19アウトブレイクのジェンダーの意味」(2020/3/16) (Care)

▶︎
「Covid-19による世界中での休校措置、女子に最も大きな打撃をもたらす」(Plan International)

 

日本の動き

政府対応
支援給付と世帯主義
政府による経済補償策が家父長制的な世帯主義をとっていることから、妻や子どもなど世帯主以外の人びとの権利が阻害される恐れが指摘されています。

▶︎生活支援臨時給付金

収入が減収した世帯に対し、申請に基づき30万円の「生活支援臨時給付金」を給付する支援制度は、当初、世帯主の収入のみを基準としていました。批判を受けて政府は4月14日に世帯主以外の減収も対象とするよう見直すことに。

「30万円給付、対象拡大検討 世帯主以外の減収対応」(2020/4/14東京新聞)

▶︎特別給付金

10万円の特別給付金の受給権者は男性が多くを占める世帯主とされています。このため、暴力被害者が受け取れなくなる可能性があるほか、世帯内における不平等な関係性が強化される危険があります。

「10万円、DV被害者にどう給付 住所変更呼びかけ検討」(2020/4/21朝日新聞)

10万円給付における世帯主義の見直し等、ジェンダー視点からの政府対応を求める要請文が出されました。アジア女性資料センターも賛同しています。

「政府の新型コロナウィルス対策に対する女性たちからの要請」(2020/5/1)

▶︎その他

無戸籍 高齢女性が餓死 (2020/12/25 Yahoo!Japanニュース)

 

世界の動き

 

支援情報

全般
▶︎新型コロナウィルス感染症に伴う各種支援のご案内/COVID-19 Information and Resources (内閣府)

世帯、個人、中小、小規模事業者に対する給付、貸付、猶予・減免に関する情報を確認できます。支援情報ナビでは自分の困りごとに対する支援策を探せます。

外国人労働者
▶︎がいこくじんのみなさんへ しごとやせいかつのしえんについて/For foreign workers about the support of daily lives and work(厚生労働省)

外国人労働者の方・技能実習生などに向けて政府による新型コロナウィルスに関する情報や支援情報が記載されています。

▶︎外国人労働者向け相談ダイヤル/Telephone Consultation Service for Foreign Wokers・労働条件相談ホットライン/Working condition consultation hotline  (厚生労働省) Foreign language Consultation is available.

労働条件等に関して外国語で電話相談できるダイヤルおよびホットラインの情報が記載されています。

▶︎新型コロナウィルス感染症に関する労働問題 Q&A/Covid-19 Labor & Employment Q&A For Workers (日本労働弁護士団)

新型コロナウイルス感染症の影響の影響で起こりうる労働問題に関するQ&Aを日本労働弁護団がまとめたものが記載されています。特に、日本で働く外国人の方々が直面する可能性の高いものをまとめ、Q&Aの多言語翻訳がされています。

暴力
▶︎パートナーや恋人からの暴力に悩んでいませんか。一人で悩まずお近くの相談窓口に相談を。/Information about the consultation services of violence against women (政府広報オンライン)

内閣府の男女共同参画局が平成30年3月に公表した「男女間における暴力に関する調査報告書」によると女性のおよそ7人に1人が配偶者などから繰り返し暴力を振るわれたり暴言を吐かれたりしたドメスティックバイオレンス(DV)の経験があるとい結果が出ています。身体的能力、精神的暴力、経済的暴力など様々な暴力に当たる例、被害相談先、支援内容がまとまっています。

▶︎配偶者からの暴力被害者支援情報(日)/Information for Victims of Spousal Violence for foreigners(ENG) (内閣府男女共同参画局)

配偶者からの暴力の被害にあった方が相談をすることができる機関が示されています。

▶︎DV相談プラス/Domestic Violence Hotline Plus (内閣府男女共同参画局) Foreign language Consultation is available. 

DV被害者に対して、24 時間対応の電話相談、SNSや電子メールを活用した相談、外国語による相談を実施するとともに、被害者の安全を確保し社会資源につなげるための同行支援、緊急的な保護等の支援を、総合的に提供しています。

▶︎DV相談ナビ(内閣府男女共同参画局)

配偶者からの暴力に悩んでいることを、どこに相談すればよいかわからないという方のために、全国共通の電話番号(#8008)から相談機関を案内するDV相談ナビサービスを実施しています。発信地等の情報から最寄りの相談機関の窓口に電話が自動転送され、直接ご相談いただくことができます。

妊娠に関する相談
▶︎全国のにんしんSOS相談窓口(一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク)

全国の自治体、民間団体、民間養子縁組機関による誰にも言えない、思いがけない妊娠をした方々への相談窓口の情報などが記載されています。

▶︎ 中高生の望まない妊娠 無料の妊娠検査 (2020/12/28 NHKによるまとめ)

予期せず望まない妊娠をした可能性のある中高生など18歳以下の女性を対象に無料で妊娠検査を行う取り組みをしている20の医療機関が記載されています。いずれの病院も、健康保険証を提示しなくても匿名で受診することができます。

人権問題 (虐待・暴力・ハラスメント)
▶︎政府

みんなの人権110番(法務省) Foreign language consultation is available

様々な人権問題に関する相談 (子供・高齢者・障害者・女性・外国人など)を電話、インターネット、ラインにて受け付けています。

▶︎その他

よりそいホットライン (一般社団法人社会包括サポートセンター) Foreign language Consultation is available. 

24時間どこからかけても無料の電話相談で、暮らしの困りごと、DV、自殺予防、セクシュアリティー、被災後の暮らしなど困りごとによって専門回線があります。外国語でも相談可能です。

いのちの電話の相談 (毎日フリーダイヤル相談)全国いのちの電話(一般社団法人日本いのちの電話連盟)

コロナ禍の中で様々な困難や苦悩にあって、おひとりで苦しんでおられる方へ、毎日16時から21時まで、フリーダイヤル「自殺予防いのちの電話」を実施しています。各地域にもいのちの電話が設置されています。

チャイルドライン支援センター(18際以下対象)

18歳までの子供専用で全国共通フリーダイヤル、オンラインチャット相談が設置されています。

無戸籍者に対する支援
▶︎無戸籍者のための相談窓口(明石市)

無戸籍者に対し、生活支援や教育支援を含め、総合的支援を行なっている全国の中でも知見を積み重ねた自治体の一つです。

▶︎無戸籍24時間相談ダイヤル(明石市) (2021/1/22開設)

【無戸籍24時間相談ダイヤル】 078・918・6059(月~金曜、午前9時~午後5時)。時間外、休日は『無戸籍児家族の会』(090・8048・8235

▶︎民法 772 条による無戸籍児家族の会 

離婚後300日問題による無戸籍を解消するための認知調停等のサポートをする民間支援団体で、明石市とも連携をして相談や精通弁護士の紹介を行っています。

 

分析記事・声明文

▶︎フェミニズム視点からのコロナ対応策を求める緊急アピール (2020/11/30)
▶︎「国に対し、新型コロナウイルスについて 国際人権基準に基づく対応を求める」を提出しました。(2020/05/19) (NGO共同声明)
▶︎東京新聞/中日新聞でアジア女性資料センターの「COVID-19とジェンダー」キャンペーンが紹介されました (2020/04/22)

 

ご支援ください

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