ニュース

【COVID-19とジェンダー】グローバル・サウス及びグローバル・ノースの周辺化されたコミュニティのフェミニスト・女性人権団体声明

2020/04/10

COVID-19とジェンダー 翻訳記事

 

フェミニスト原則と女性の人権にコミットするわたしたちネットワーク、団体、活動家は、各国政府に対し、COVID-19対応において人権基準を認識しこれに沿って行動すること、平等と非差別の原則を保持し、最も周辺化された人びと――すなわち、女性、子ども、高齢者、障碍のある人びと、健康に問題を抱えた人びと、農村地域の人びと、住居のない人びと、施設収容者、LGBT+の人たち、難民、移民、先住民、無国籍者、人権活動家、武力紛争下の人たち――を中心に置く対応をとるよう呼びかけます。フェミニストの政策は、もっとも脆弱なコミュニティのニーズを認識し優先するものです。このパンデミックへの対応を超えて、人権原則によって機能する国において、平和で包摂的な繁栄するコミュニティを創っていくことが必要です。

現在の危機的状況において、誰もが必要とする情報と支援のシステム、資源にアクセスできるよう、政府が人権および複合的アプローチを採用することが重要です。わたしたちはCOVID-19危機において考慮されるべき9つの重要領域があると考えています。以下に記述している、考えられる問題および勧告は、脆弱な立場に置かれている人びと――とりわけ性別、ジェンダー、性的指向ゆえに多大な影響を受ける女性や少女たちの経験を考慮し、彼女たちの脆弱性をさらに拡大させたり、すでに存在している不平等を拡大させることなく、彼女たちの人権を保障するような解決を政策決定者たちに促すものです。

これらのガイドラインは、女性や少女、その他の周辺化された集団が意思決定に関与することの代替になるではなく、むしろ彼女らとの協議およびリーダーシップにおける多様性が求められる理由となります。

COVID-19に関するフェミニスト政策:9つの重要領域

食糧安全保障

食糧を輸入に頼っている国々では、国境と市場が封鎖され食糧が手に入らなくなるのではないかという恐れが生じている。都市部や大きな食品店へのアクセスが容易でない貧困層や農村地域の、特に女性たちにとって懸念はいっそう大きいものである。この懸念により、手段を持つ人々が物品を大量に購入することになるが、そういった大量購入により、大量購入ができない低所得の人々は物品の入手可能性が狭められ、食糧を補充しようとする際に品不足に直面する。この問題について政府に次のことを求める。

  • 食糧配給券や食糧補助金を拡大あるいは導入する。いま援助を受けている人たちに対しては、その量を増やし、この状況下でより脆弱な人びとが受け取れるようアクセスを拡大すること。
  • 在庫を管理し、低収入者へのアクセスを拡大させるため、保存の効く食料品を供給するよう事業者たちに指示する
  • 備蓄と分配に必要なだけの食糧を農村地域に送ることで、都市部にて人々が配給にアクセスする際の遅れを廃し、また出荷遅延による食糧不足を防ぐこと
  • 家を離れられない人たち(一人暮らしや辺鄙な地域に住む障碍者など)へ食糧を届けること

保健

ウイルスの蔓延により、すべての国において、公的保険システムへの重大な負担が予想され、妊産婦保健の低下や乳幼児死亡率の増加につながる可能性がある。農村地域では保健サービスや医療品へのアクセスがしばしば限られる。高齢者、障碍者、免疫システムに問題を抱えた人たちはリスクが高く、住み込みのサポートが受けられない可能性がある。日常の変化やウイルス感染拡大により、メンタルヘルスの問題を生じたり悪化する可能性もある。こうした危機は、WHOが2019年3月に出した、ジェンダー平等に関するレポートによると、保健・社会セクター労働者の7割を占めという、女性たちに重大な影響をもたらす。また、人々の面倒をみるケア従事者にも、過度な影響をおよぼす。

  • 感染および死亡率も含めた、性別のデータをとりジェンダー分析を確実に行うこと
  • 保健サービス、保健要員、医療品、医薬品の供給を増やすこと
  • 危機の間も、女性が緊急避妊薬や安全な中絶等、包括的なセクシュアル・リプロダクティブヘルスのサービスに迅速にアクセスできるようにすること
  • 保健・コミュニティ施設に十分な生理用品のストックを確保すること
  • 医療スタッフとソーシャルワーカーがDVの兆候を理解し、適切な資源とサービスを提供できるよう訓練すること
  • 一人暮らしの高リスクの人たちのデータベースを作成し、定期的に連絡を取り合い、物資を届けるシステムとネットワークを構築すること
  • COVID-19と関係なくとも、偏見のない医学的研究と検査に基づく、医療サービスを女性と少女に継続して提供すること
  • メンタルヘルスのニーズに効果的に対応するため、手話や文字などによるアクセス可能な電話/ビデオの電話ホットラインやバーチャル支援グループ、緊急サービス、医療提供などを含むシステムを導入すること
  • 障碍や慢性疾患をもつ人々のためのリハビリセンターが継続してオープンできるよう支援すること
  • 健康保険加入状況や入管法上の地位にかかわらず、すべての人々に適切な保健サービスを提供するよう保健機関に指示し、正規・非正規にかかわらず移民と無国籍者、住宅のない人々が差別や拘留、退去の恐れなく医療を受ける権利を保障すること
  • 自分自身の健康を守ることができるよう、保健従事者が適切なトレーニングを受け、また、適切なトレーニングが受けられるようにするとともに、保護具にアクセスできるようにし、メンタルヘルスの支援を提供すること
  • 女性保健従事者の特有のニーズを検討し応えること

教育

学校閉鎖は、子どもたちとその家族、コミュニティを守るために必要であり感染率の上昇を抑えるのに役立つが、教育機会と子どもたちが慣れ親しんでいる日常の中断を意味する。学校給食を頼りにしていた子どもたちが食事に困ることにもなる。家庭やコミュニティにおける暴力にさらされやすくなる子どももいる。加えて、学校閉鎖は、従来子供の面倒を見てきた女性たちにとっても大きな負担となる。

  • 子どもたちが教育を受け続け落第しないために、復習や宿題のパッケージを用意するとともに、保護者に教育資料の説明を提供するなどの指示を教育機関に出すこと
  • 子どもたちの学齢にあわせた教育ラジオプログラムを用意すること
  • 子どもを見守る手段がとれない家族のために、育児サービスを助成すること
  • オンライン教育プログラムや教材へのアクセスを拡大するために、無料のインターネット・アクセスを拡大し、障碍の有無を問わず子どもたちがバーチャル授業に参加できるようにすること
  • オンライン教育にアクセスするためのPCを必要な子どもに提供すること
  • 子どもたちが食事を得ることができるよう手段を講じること
  • 障碍のある子どもをケアしている家族のために追加の金銭的精神的支援を提供すること

社会的不平等

社会的不平等は、男性と女性、市民権保持者と移民、正規と非正規の居住者、障碍のある人とない人、神経学的に標準の人と非標準的な人、その他の二分法や差異により、また人種、民族、宗教的集団間に存在している。こうした社会的脆弱さは、収入の欠如やストレスの増加、家庭内の不平等な責任によってさらに拡大する。女性や少女はケア責任を負わされることで、賃労働や教育への負担が増すこともある。脆弱な集団は、行動や集会を制限する法や手段が執行されるとき、特に、その情報を得たり理解することができない場合に、いっそうリスクにさらされる。

  • 明確な条件とすべての労働者に対する手当によって、平等に家庭内責任が担われるよう促すこと
  • 住む場所がない人々のために、衛生と緊急シェルターへのアクセスを増やすこと
  • 特に新しい法律の施行にあたり、脆弱な集団の認識と関与についての指令を実施し執行機関への訓練を行うこと
  • 法令や政策の実施プロセスについて市民社会組織と協議すること
  • 手話や先住民族の言語を含む、複数の言語でのアクセス可能な形式かつ、読みやすく簡単な言葉による、情報、保健教育及び資源への平等なアクセスを保障すること

水と衛生

全員が綺麗な流水にアクセスできるわけではない。この課題に対応するため、政府に以下を求める。

  • 清潔で飲用に適した水が水道を通して家庭に、また低開発地域にも供給されるようにインフラ整備を行うこと
  • すべての給水停止を中止し、給水を再開するための料金を排除することで、清潔な飲料水をすべての人に提供すること
  • 非衛生な水の問題を早急に解決すること
  • コミュニティに公共の手洗い場を設けること

経済的不平等

人々は、企業の一時的な閉鎖や、勤務時間の短縮および、限定された病気休暇や長期・短期休暇、スティグマにより、失業、不完全雇用、および収入の損失に直面している。これらは、人々の金融債務支払い能力に悪影響を与え、さらなる負債を生み出し、必要な物資を確保することを困難にする。閉鎖と社会的距離を置くことの必要性から、子どもや高齢者、障碍を持つ人々を対象とするケアの選択肢およびケアのための支払い能力が不足している。これにより、有給あるいはギグ・エコノミーから、家庭内ケア提供者による無給経済へと労働にシフトが生まれる。この課題に対応するために、以下を政府に提言する。

  • 直接的、また間接的にウイルスの影響を受けた人々や、脆弱なグループに属する人々を対象にした、家賃および住宅ローンの延滞による立ち退きの一時的禁止令、および家賃および住宅ローン支払いの延期を実施すること
  • 支払い能力や支払い履歴に関係なく、水や電気、電話、インターネット等の公共サービスの停止の一時的禁止令を実施すること
  • 収入を失った人々にユニバーサル・ベーシック・インカムを提供すること
  • 住む場所のない人々や、難民、女性の避難所に財政支援を提供すること
  • 高齢者や障碍を持つ人々に追加の財政支援を提供すること
  • 利益の分配を促進すること
  • 病気休暇、育児休暇、介護休暇、一般休暇の施策を変更すること
  • パンデミック以前と同じ給与条件のもと、従業員をリモート勤務できるよう企業に指示すること
  • 石鹸、消毒剤、手指消毒剤などの必需品を含むパッケージを配布すること

女性に対する病力、家庭内/親密関係における暴力

性的および生殖に関する暴力を含む家庭内・親密関係における暴力の深刻度は、緊張が高まるにつれて急上昇する可能性がある。移動制限(社会的距離、自己隔離、極端なロックダウンあるいは検疫)もまた、被害者の虐待に対する脆弱性と保護サービスの必要性を高める(経済的不平等の項目参照)。虐待するパートナーが常に家にいるため、避難するのはより困難である。子どもたちは、虐待の増加に加え、ケアを提供する人々から離されるというリスクに直面している。極端なロックダウンが課せられた場合、公的資源が流用され、保護サービスへのアクセシビリティは低下する。暴力と迫害から逃れた女性と少女は、国境閉鎖と移動制限のために出身国を離れたり、庇護国に入国することができない。この課題に対応するために、政府に以下のことを提言する。

  • 警察部署内に別個のユニットおよび家庭内暴力を報告するためのホットラインを設置すること
  • 家庭内暴力に対応し、サバイバーに避難所、カウンセリング、法的援助などの支援を提供する非政府組織の資源を増加させるとともに、運営を続けているものについては利用可能な旨を周知すること
  • ジェンダーに基づく暴力に関する情報を広め、利用可能な資源とサービスを公表する
  • シェルターを含む、指定された公共サービスを閉鎖せずアクセス可能にすること
  • 保護サービスが、住民とクライアントの安全を確保するためのプロトコルを含む緊急計画を確実に実施すること
  • 安全な検疫とテストを含む、ウイルスへの曝露のために入院しない可能性のある女性へのケア・プロトコルを発展させること
  • ロックダウンと隔離期間全体をカバーするように司法措置・保護命令の期間を延長すること
  • 家庭内暴力の被害者がアクセスできる、電話会議を介しての裁判所手続きに関して手続きを整えること
  • すべての家庭内暴力の報告に対応し、サバイバーを適切なリソースとつなげるよう警察に指示すること
  • 脆弱な立場にある女性や少女、その他の人々が国境で拒絶されないようにし、領土および亡命手続きへのアクセスを確保すること。必要であれば、テストへのアクセスを与えること。

情報へのアクセス

特に、構造的に差別されている人々や、疎外されているコミュニティに属している人々にとって、信頼できる情報へのアクセスは不平等なものである。人々は、この危機の間、国家の保険当局から定期的に最新の情報を受け取る必要がある。この課題への対応として、政府に以下を要請する。

  • ウイルスの蔓延を防ぎ、封じ込めるための公共キャンペーンを開始すること
  • 市民に情報提供するためのあらゆる取り組みにおいて、市民社会と協議して協力すること
  • インターネット、ラジオ、テキストメッセージなど、分かりやすい言葉とアクセス可能な手段、様式、形式で情報を一般公開すること
  • 障碍者が手話、クローズドキャプション、その他の適切な手段を通じて情報にアクセスできるようにすること
  • 非政府組織への助成金を増やし、適切な方法で翻訳し、異なる言語を話す人や特定のニーズを持つ人々に確実に配信すること
  • 住む場所のない人々や障碍を持つ人々、移民、難民および非標準的な人などの、特に脆弱な人々に焦点を当てた情報およびリソースを共有するためのタスクフォースを構築し展開すること
  • 誤情報との戦いを装った、COVID-19のパンデミックに関するジャーナリストの報道の阻止または制限を控えること

権力の濫用

  • 刑務所や移民センター、難民キャンプ、障碍者施設や精神科施設に収容されている人びとは、監禁状態のためにより高い感染リスクにさらされている。また、限られた外部の監視と訪問の制限の結果として、虐待やネグレクトの危険にさらされる可能性もある。当局が、新しい法律の施行や新しい法律の導入に際し、その実施に熱心になりすぎることは珍しくない。この危機の間、脆弱な人々、特に反体制派である人々は、潜在的に当局との危険な接触が高くなる。この課題への対応として、政府に以下を要請する。
  • COVID-19に関連する制限を実施する際には法に従って行うこと
  • いかなる制限も、厳密に必要であり、比例的であり、かつ一般的な理由の正当な目的のために実施されること
  • 公共の利益のために取られた制限が、すでに極めて脆弱であり基本的人権が否定される危険にさらされている女性や少女にジェンダー特有の被害がもたらされないよう監視すること
  • 既存の法律を変更する際は、人権団体およびオンブズパーソン・人権活動家に相談すること
  • 逮捕よりも安全の確保を重視するよう法執行官に働きかけること
  • 法執行官、介護福祉士、ソーシャルワーカーを訓練し、脆弱性を理解した上で採用するアプローチと関与に関し調整を行うこと
  • 人権に基づいたプロトコルを採用し、勾留施設および監禁施設におけるウイルスの拡散を制限すること
  • 外部からの監視を強化し、家族との安全な連絡(無料の電話など)を促進すること
  • 市民社会組織および国のオンブズパーソン・人権活動家が、これらの機関内の動向を定期的に監視することを支援すること
  • パンデミックが収まったら緊急法と権限を廃し、チェックアンドバランスのメカニズムの回復を約束すること

(翻訳:小宮理奈)

原文:Statement of Feminists and Women’s Rights Organizations from the Global South and marginalized communities in the Global North

 

▷COVID-19とジェンダー キャンペーンページへ

 

DOCUMENTS