アドボカシー・キャンペーン

グアテマラ:内戦下の軍の性暴力とたたかう先住民族女性たち

2011/01/26

Guatemala グアテマラ

戦時性暴力の被害者から、変革の主体へ

内戦下の軍の性暴力とたたかう先住民族女性たち


グアテマラの歴史と内戦
 16世紀にスペイン植民地の拠点とされたグアテマラは1821年に独立を果たしますが、先住民族の苦境は改善されませんでした。1870年代の自由主義改革で先住民族は共有地を奪われ、輸出用コーヒーの大農園で苦役を強いられるようになります。20世紀に入るとバナナプランテーションも形成され、アメリカの権益が確立されていきました。
 1944年以降、民主化の機運が高まりますが、左派政権が着手した農地改革を権益への脅威とみたアメリカの支援を受け、1954年、クーデターにより軍事政権が成立します。反政府ゲリラと政府軍との間で1960年に始まった内戦により、1996年までに殺害されたり「失踪」した人々は20万人、避難民は100万人に上るといわれます。その多くは、ゲリラ支持者とみなされた農村部の先住民族でした。政府軍は、ゲリラを支持基盤ごと皆殺しする「焦土作戦」を展開、残酷な拷問、遺体への辱め、また性暴力を用いて、人々に恐怖を植え付けました。
 国際社会が和平交渉に応じるようグアテマラ政府に圧力をかけた結果、1996年12月に、民主化と人権、社会経済改革、先住民族の権利など11の項目にわたる和平協定が締結され、内戦は終結しました。その後、カトリック教会や国連が支援する真相究明委員会による内戦中の人権侵害に関する調査が行われ、勧告も出されていますが、先住民族の権利保障や土地問題など、重要な和平協定の履行にはほとんど進展がみられません。

「法廷」に刺激を受けた女性たちのとりくみ
 2000年に東京で開催された「女性国際戦犯法廷」の4日目に行われた「現代の戦時性暴力に関する国際公聴会」で、ヨランダ・アギラルさんは、グアテマラ内戦で家族を殺害され、自身も性暴力を受けた経験を証言しました。「法廷」を通して世界各地の戦時性暴力サバイバーとの出会い、勇気づけられたヨランダさんは、帰国後、内戦中に性暴力被害を受けた先住民族女性たちの回復と権利推進のためにプロジェクトをたちあげました。
 このプロジェクト「戦時性暴力の被害者から変革の主体へ」は、2009年、やより賞に選ばれました。これまで教育を受ける機会もなく、農村部で貧しい生活を送ってきた先住民族の女性たち約100人が参加しています。
 プロジェクトは、女性の権利を推進する「グアテマラ全国女性連合(UNAMG)」と、内戦下暴力被害者の心理的サポートを行っている「社会心理行動と共同体研究グループ(ECAP)」の2団体が共同で運営されています。女性たちが体験を共有し、癒しを得て自己の尊厳を回復するワークショップをメンタルヘルスと組み合わせて行うとともに、社会に対しては、歴史的記憶を回復し、性暴力の根絶と女性の権利の擁護、戦時性暴力被害者への正義を訴える活動を行っています。

 2009年12月に東京で開催されたやより賞贈呈式で、プロジェクト参加者のマリアナさんは、「1984年3月27日に夫は軍に連れ去られ、私自身も軍に性暴力を受け、つらい気持ちを抱えながら、3人の娘たちとたいへんな思いをして生きてきました」と話しました。
「別の村から逃げてきた同じ境遇の女性たち300人で、集団で生活をしていました。私たちは、夫が殺されたことや、ひどい拷問を受けたことは互いに話しましたが、自分が受けた性暴力のことだけは話せないままでした。ずっと、自分だけの問題だと思って心の中にしまってきましたが、プロジェクトで同じ経験をした女性たちと性暴力の経験を話しあうことで、自分だけでないと分かって、互いに強い信頼関係で結びつくことができました。他の女性たちの経験を知ることは、私にとって大きな意味がありました。10歳や12歳で軍に性暴力を受けた女性、1年半も軍に連れ去られていた女性、また、性暴力被害を夫が知り、子どもと一緒に家から追い出されてしまった女性もいました。プロジェクトに参加してから女性の権利について学び、自分が価値ある存在だということを実感しました。」

グアテマラ内戦下の性暴力を裁く民衆法廷
2010年3月4・5日、グアテマラ・シティで、内戦中の性暴力に関する民衆法廷が開催されました。共催団体は、「戦時下性暴力の被害者から変革の主体へ」プロジェクトを運営するUNAMGとECAPのほか、先住民族女性組織「つれあいを奪われた女たちの会(コナビグア)」、女性弁護士組織「世界を変える女たち」、女性新聞「ラ・クエルダ」です。法廷には、各国大使や国連機関代表、世界各地の市民団体も参加しました。
 法廷の検事や進行役はスペイン、グアテマラの弁護士が務め、名誉判事として、グアテマラ、ペルー、ウガンダ、日本の活動家が参加しました。
 1日目に行われた被害者証言では、グアテマラ各地域から5人の女性が、姿は見せずに、性暴力被害の経験を語りました。また現在も続く問題として、鉱山開発のために先住民族共有地から住民が強制排除された際に警官に強かんされた女性たちの証言なども紹介されました。
 2日目には、専門家証言と検事による最終弁論、名誉判事団による宣告が行われました。宣告は、内戦中、女性への性暴力が他の暴力とともに行使されたこと、それはグアテマラ刑法に照らして違法な行為であったこと、加害者は軍兵士や警官など国家権力行使者であり、加害責任は国家にあること、それらの犯罪が現在に至るまで調査も処罰もされていないために不処罰・免責が続いていることを指摘し、ゲリラ側も国際人権法を順守せず性暴力を犯したことも指摘しました。そして、戦時下における女性への性暴力は男女間の不平等の結果であり、内戦が終わった現在も女性差別が続いていること、被害女性が正義を獲得し補償を受けるための措置が不十分・不適切だったこと、内戦下性暴力は普遍的人権の侵害であることを指摘しました。またグアテマラ国家に対し、国際刑事裁判所ローマ規程を批准し、免責・不処罰を終わらせ、裁判を適切に進め、被害者に十分な補償を行うようよう勧告しました。
 宣告が読み上げられると、総立ちの会場は大きな拍手と熱気であふれ、女性たちの正義と尊厳が回復された瞬間をたたえあいました。

資料館