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神戸地裁の不当判決に抗議し、控訴を求める声明

2011/03/02

義父による強かんを無罪とした神戸地裁の不当判決に対し、以下の声明を発表し、神戸地裁、最高裁、神戸地検、大阪高検、に送付しました。

神戸地裁の不当判決に抗議し、直ちに検察庁による控訴を求めます

 私たちは、内縁関係にあった女性の娘に対する強かん罪に問われた被告を全面無罪とする2月22日の神戸地裁判決に、大きな衝撃と怒りを覚えています。虐待被害者の心理と、支配関係の中で起きる性暴力についての理解を著しく欠いた、許し難い不当判決であり、強く抗議します。

報道によれば、被告は、当時高校生だった少女に対し、自宅で複数回の性的暴行を加えたとして、懲役13年を求刑されていました。ところが、奥田哲也裁判長は、暴行を受けたとされる時期に被害少女と被告が連れだって買い物に行ったことや、少女と被告が上半身裸で写っている写真をもって、「(被害者が)身体的接触を受け入れているようにも思われる」と述べる一方、被告に極度の恐怖心を抱いていたという被害者の供述を「信用できない」と否定し、「抵抗することが著しく困難だったとは言えない」として、被告に全面無罪を言い渡しました。

 これまで多くの裁判で、「被害者の抵抗を著しく困難にする程度の」暴行または脅迫が用いられたかどうかが、強かん罪成立の判断基準とされてきました。しかし実際には、多くの性暴力被害者が、恐怖やショックのあまり抵抗できなかったと答えています。とりわけ継続的な支配関係におかれた被害者は、「抵抗」すればさらに虐待を招くことを学んでいるため、むしろ加害者に迎合するような態度をとることで、暴力的な環境を生き延びようとします。このような関係においては、加害者は性行為を強いるために、明確な暴行・脅迫を用いる必要すらありません。

義父と未成年の少女の間には、そもそも圧倒的な力の差があり、少女が相手に対して完全に自由に性的自己決定を行使できる関係性とはいえません。密室性の高い家族の中で発生する虐待は、外部の人に相談しづらく、経済力のない未成年にとって容易に逃れ難いものであるがゆえに、被害者が生き延びるために加害者に迎合的な態度をとることは、なんら不思議ではありません。被害者の性的自由を抑圧する支配関係を十分に検討せずに、「抵抗することが著しく困難だったとは言えない」とする論理は、多くの性暴力被害者の現実を無視し、女性全体を絶望させるもので、絶対に許すことができません。

私たちは、検察に対し、この不当判決を確定させず、控訴することを求めます。また、今回の神戸地裁判決の背後には、より根幹的な問題として、被害者の性的自由に対する実質的侵害に焦点をあてていない現行の刑法強かん罪の定義、および1949年の最高裁判例にもとづく狭い解釈があると考えます。外形的な「抵抗」や「暴行・脅迫」の有無を問う現行の法解釈を見直し、当事者間の権力関係も考慮に入れて、被害者の性的自由の実質的侵害を問う法解釈を早急に示すよう、最高裁に求めます。

2011年3月2日
アジア女性資料センター

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