「f visions」No.3 【特集】「復興開発」が押しつぶしてきたものは何か――脅かされる生活、分断されるコミュニティ
2021/06/182021年6月発行
単価(冊子版) : ¥1,980 (税込)
単価(ダウンロード版) : ¥1,760 (税込)
アジア女性資料センター発行/夜光社発売
2011年に発生した地震・津波・原発事故の多重災害は、成長を優先してひた走ってきた日本が根底にかかえていた深刻な脆弱さと不平等を露呈することになった。エネルギーや資源を大量に消費する都市中心の開発が、地方の環境と生業の持続性をいかに損ない、原発労働者らの犠牲をいかに不可視化してきたか。女性たちが黙って無償で家族と地域を支え続けることをいかに当然視してきたか。その気づきは、近代化以降の日本社会のあり方を根本から見直すきっかけとなり得たはずだった。しかしこの国が選んだのは、原発政策の継続と、東京を中心とする「復興五輪」だった。「アンダーコントロール」という首相のあからさまな嘘は、オリンピックの歓喜と経済大国日本の復活を幻視しつつ、災害が突きつけたあらゆる問題を忘れ去ろうとする意思を示していたのだ。猖獗(しょうけつ)をきわめるパンデミック―これもまた歪んだ開発が生み出したものだ―によって人々の命と安全と生業が日々奪われるなかにおいてすら、五輪という資本の祭典にむけた資源の動員が強行されている状況は、この10年間、わたしたちが正面から向き合うことを怠ってきた問題が決して立ち去ることなく、より深刻さを増し続けていたのだということを突きつけている。(「特集にあたって「復興開発」が押しつぶしてきたものは何か─パンデミックと五輪の災厄下で問い直す」より抜粋)