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不当判決でした:警察のセカンドレイプを問う裁判

2007/12/04

2002 年に米兵によるレイプ被害を受けたオーストラリア人女性「ジェーン」さんが、被害者の意思を無視した神奈川県警の捜査によって多大な苦痛を受けたとして国家賠償請求を起こした裁判の判決が、本日午後、東京地裁でありました。加藤謙一裁判長は、原告の訴えを棄却し、捜査の違法性を認めませんでした。

判決は、「犯罪捜査規範や被害者対策要綱は警察署の内部規律に過ぎず、性犯罪被害者対応ハンドブックも執務資料に過ぎないため、法的作為義務を規定したものではない」としながらも、これらの作成において、性犯罪被害者に対する二次被害の防止が目的とされた経緯をかんがみれば、被害者の「保護義務違反の有無の判断に際し、当該主旨を斟酌する可能性がないとまでは断言し難い」と認めました。
しかし、当該事件については、当時の原告の心身の状況が警察官の応急の救護を要する状態であったとまではいえないとし、証拠保全や捜査の必要性を考慮すると、神奈川県警の捜査は違法とまではいえない、という判断でした。
以下、原告および弁護士の記者会見から、概要をお伝えします。

性犯罪の捜査においては、被害者が安全、安心できる環境を確保し、その尊厳を守ることが非常に重要であることは、よく知られた事実です。しかしこの事件では、神奈川県警は、被害者の意思を尊重し、合意を得て捜査を行うという義務を怠りました。
ジェーンさんは、被害を受けた直後の午前3時に警察に通報し、すぐに病院に行きたいと訴えたにもかかわらず、警察は事件現場で指差しを指示して写真を撮るなど、捜査協力を彼女に強いました。女性の当直捜査官はおらず、事情聴取は男性刑事3人によって、署の刑事部屋のソファで行われました。ジェーンさんは、レイプの法医学捜査には尿検査が必要であることを知っていたのでトイレに行くのを我慢していましたが、結局ジェーンさんが診察を受けられたのは朝9時半に病院が開いてからでした。病院から戻った後も捜査に協力させられ、ようやく解放されたのは午後3時でした。この間、睡眠も、食事も、一杯のコーヒーも、また暴行の際に失われた下着の替えもあたえられないままでした。彼女はその状態で、ひとりで車を運転して帰りました。

 ジェーンさんが、病院に行きたいとくり返し訴えたにもかかわらず、警察が彼女の希望を聞き入れず、事情聴取を優先したことについて、判決は、被害者は応急の救護を要する状態であったとは認められず、警察に保護の義務はなかったとしました。
警察は、捜査はジェーンさんの同意を得て行った、捜査への協力を強制はしていない、替えの下着は申し出たが、ジェーンさん自身がいらないと断った等、原告とは対立する主張をしていました。この点について裁判所は、原告の主張するような事実は認められないとし、捜査の必要をかんがみると、違法とはいえないとしました。
 また警察は、ジェーンさんを午後まで警察署に留め置いた事実はなく、病院での受診後、昼前には帰らせたと主張していました。しかし原告側が提出したレントゲン写真や病院の会計の記録等の証拠から、被告が主張するよりも遅く病院を出たことは明らかであるにもかかわらず、長時間にわたる拘束について裁判所は事実の認定を行いませんでした。

中野麻美弁護士は、「被害者が置かれた状況に関する理解がまったく欠如している判決で、これは司法におけるジェンダーバイアスの現れだ。さらに、痛みを訴えている原告が記憶していることよりも、被告である警察の主張の方がなぜ信じられるのかという十分な根拠を示していない。客観的な証拠は警察官の証言と矛盾しているにもかかわらず、そのことを問題にもしておらず、事実認定においてもプロフェッショナルとはいえない判決だ。これが、二次被害に関する公的な判断だとすれば、女性に対する暴力根絶という国の政策促進はほとんど不可能である」と述べました。

原告のジェーンさんは、「日本の警察にとっては、性暴力を受けただけでは病院に連れて行くにも価しないのか。骨が折れたり、殺されたりしないと、信じてももらえないのか。今日の判決は、女性はレイプされても警察に行くべきではないというメッセージを示した。米兵は1940年代から日本人の女性と子供をレイプし続けてきた。私は生きて声を出すことができるが、死んでしまった人たちもいる。この状況を変えなくてはならない。まずは、レイプ被害者に再現写真を撮らせるようなことは禁止されなくてはならないし、日本に24時間のレイプクライシスセンターがないことも問題だ。今日、顔を見せないのは、家族を守るためであって、自分を恥じているからではない。恥じるべきは日本の警察や米軍です。控訴して、最後まで闘う」と話しました。

12月10日(月)午後7時~ 東京ウィメンズプラザにて、報告集会を行います。

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